翻訳|training
運動刺激に対する人体の適応性を利用し,身体運動を行うことによって意志力を含めた人間の体力を高めること,もしくはその過程をいう。生体は運動という刺激によって変化を生じ,それを繰り返すことによって生体の機能を高めることができる。この生体のもつ適応能力により,運動を繰り返すことでトレーニング効果が生ずる。筋肉や内臓などの運動のエネルギー発生に必要な臓器の機能を高めることにより,筋力,持久力,パワーなどを向上させることを狭義のトレーニングと呼び,それに対して,神経系統の機能を高めバランス,タイミング,巧緻性などの調整力を向上させることを練習practiceと呼んで区別することもある。人体にはいろいろな機能があるので,トレーニングにあたっては,何を強化するのかという目的をはっきりさせることが重要である。それによってトレーニングの方法が異なる。また,人体の適応能力は,年齢,性,健康状態,体力状態,栄養状態などによって異なるので,その内容もそれらを考慮して決める必要がある。トレーニングに必要な運動の種類,強さ,時間,頻度を決めることをトレーニング処方という。
トレーニングの分類はいろいろな立場からなされている。(1)運動負荷方法による分類 筋肉の肥大と筋肉の増大を目標に重量物負荷や抵抗運動にうち勝って筋を収縮活動させるウェイト・トレーニング,基礎的な体力を総合的に養成するためあらかじめ定められたトレーニング種目の組合せをつくり休息なしに繰り返して行うサーキット・トレーニング,丘など変化のある地形を一定スピードで走るヒル・トレーニング,森や野原などを自由に好きなスピードで走るファールトレク・トレーニングなど。(2)運動負荷と休息の入れ方による分類 運動負荷と運動負荷の間に完全な休息をおくレピティション・トレーニング,筋活動を短い休止で断続的に行う,いわゆる不完全休息をはさんでのインターバル・トレーニング,持続トレーニングなど。(3)特殊な環境におけるトレーニング 高所トレーニング,低圧トレーニング,低酸素トレーニング,マスク・トレーニングなど。(4)目的別の分類 技能トレーニングと体力トレーニング。後者は全身的な総合体力トレーニングと筋力,パワー,持久力,スピードなど個々の体力要素別のトレーニングに類別される。総合体力トレーニングの方法としてはサーキット・トレーニング,複合トレーニングがある。筋力トレーニングには,筋肉の収縮様式から等張性(アイソトニック),等尺性(アイソメトリック)トレーニングなどがある。全身持久性のトレーニング方法には,インターバル,レピティション,ファールトレク,ヒルの各トレーニングなどがある。
執筆者:黒田 善雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
運動刺激に対する身体の適応性を利用し、意志力を含めて人体の形態、機能などスポーツ能力をより強化、発達させる過程をいう。近代スポーツのトレーニングは、すべてのスポーツ能力の母体となる体力づくりのトレーニングが主体となる。長期的計画のもとに進められ、トレーニング効果を集中的に高めるため、十分な科学的裏づけによる構成、展開を必要条件としている。
[福山信義]
(1)ウェイト・トレーニング スポーツ活動のポイントである筋力強化を図るもので、これには、アイソトニック・トレーニング(バーベル、ダンベル、自分の体重などを利用する動的筋力トレーニング)、アイソメトリック・トレーニング(動かない物体を動かそうと全力を発揮する静的筋力トレーニング)、アイソキネティック・トレーニング(可動部位の速度を一定にしてある器具を使い、関節角度の変化に伴いつねに最大筋力を発揮できるようにする)、プリオメトリック・トレーニング(重量物を持って台上から飛び降りる動作のように、筋肉の収縮する直前に反射的伸長と弛緩(しかん)を繰り返すことにより、筋力強化を目的とする)などがある。(2)運動の持続力を高めるトレーニング これには、ファルトレック・トレーニング(森や野原を思うままのスピードで自由に走る)、ヒル・トレーニング(ファルトレックに上り下りの坂を組み合わせたもの)、インターバル・トレーニング(急走と緩走を交互に繰り返し、全身持久性とともにスピードの持久力を高める)などがある。(3)レペティーション・トレーニング スピード、パワーの強化を目的としたもので、トレーニングの間に完全休息を入れつつ反復する。(4)サーキット・トレーニング 筋力、筋持久力、パワー、敏捷(びんしょう)性と、呼吸循環器など各種器官・組織の機能を同時に高める総合的体力トレーニングとして、体力に応じて速度、回数、時間を組み合わせ、循環して実施する。
[福山信義]
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