ケサル王物語(読み)ケサルおうものがたり(その他表記)Rgyal po Ge sar gyi sgrung

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケサル王物語」の意味・わかりやすい解説

ケサル王物語
ケサルおうものがたり
Rgyal po Ge sar gyi sgrung

ヒマラヤからバイカル湖パミールからチンハイ (青海) にいたる地域で広く伝承されている英雄叙事詩チベットでことによく知られ,口頭伝承とともに,チベット,モンゴルカルムイク,ブリアート,トゥワの各語による写本としても伝えられ,膨大な文献が残されている。モンゴルでは『ゲセル汗物語』 Geser-ün tugužiと呼ばれる。物語の発生地,成立年代は明らかでないが,その中核的部分は,チベットのカム北部地方やアムド地方を舞台に,牧民生活を基盤としたものである。原初の物語は,14世紀末ないし 15世紀初頭には存在していたといわれる。物語は,悪のはびこる人間界を統治するために,天神の子が山の神を父,水の神を母として地上のリン国に降誕する。幼年期は意地悪いほどいたずら好きで,神通力を使っては騒ぎを起す醜い鼻たれ小僧であるが,13歳で王位についてから,大獅子王ケサルと称し,ホル,ジャン,タジクカシミールなど多数の国を征服するというもの。モンゴル語の写本は 1630年代に書取られ,1716年に版行された (北京版『ゲセル汗物語』) 。現在,モンゴル語による手写本,版本は数種類を数える。

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