バイカル湖(読み)ばいかるこ(英語表記)Озеро Байкал/Ozero Baykal

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイカル湖」の意味・わかりやすい解説

バイカル湖
ばいかるこ
Озеро Байкал/Ozero Baykal

ロシア南東部、中央シベリアにあるユーラシア大陸最大の淡水湖北東―南西方向に延びる三日月形をしており、長さ636キロメートル、最大幅79.4キロメートル。面積は3万1500平方キロメートルで、淡水湖としては世界第7位の広さをもつ。古第三紀末期に始まる正断層活動による地溝に生じた断層湖で、周辺は現在なお地震が多い。バイカル湖は雁行(がんこう)する三つの湖盆からなり、いずれも非常に深いが、とくに中央の湖盆は水面からの深さが1741メートルあり、これは湖としては世界最深である。湖面は標高455メートル、周囲の山脈は湖面上1500~2000メートル程度の高さがある。湖岸は一般に急斜面で、湖岸平野は狭い。セレンガ川をはじめ336の河川が流入するが、流出路は南西端に近いアンガラ川エニセイ川支流)だけである。湖内に27の島がある。

 湖の表面水温夏季には9~12℃、湖岸では20℃に達する。1月から5月にかけて結氷し、氷厚70~115センチメートルに達するが、それでも沿岸の気候を和らげており、沿岸地域は周辺地域より10℃以上暖かい。湖水は鉱物質源に乏しく弱アルカリ性で、塩分濃度は1リットル中150ミリグラム以下である。透明度が高いことでも知られ、40.5メートルという1911年の観測値は世界歴代2位の記録である。陸地に閉じ込められたため淡水性となったアザラシなど、特有の生物が多く生息し、約1200種の動物種のうちバイカル湖固有の動物はその4分の3を占める。漁業が盛んで、サケマス、チョウザメ漁などが行われる。また木材鉱石などの水上輸送路としても重要である。アンガラ川の流出口に位置するリストビャンカЛиствянка/Listvyankaに科学アカデミー湖沼学研究所があり南岸をシベリア鉄道が通る。なお、この湖は1996年に世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産)。

[熊木洋太]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイカル湖」の意味・わかりやすい解説

バイカル湖
バイカルこ
ozero Baykal

ロシア中東部,東シベリア南部にある大きな湖。ブリヤート共和国とイルクーツク州にまたがって北東-南西方向に延びる細長い湖で,長さ 636km。幅は平均 48km,最大 79.4km。周囲 2100km,面積 3万1500km2。世界最深の湖として知られ,最大水深は 1620m。水量は 2万3000km3に達する。地溝にできた構造盆地湖で,北西岸はプリモルスキー,バイカル,南東岸はバルグジン,ウーランブルガスイ,ハマルダバンなど急斜面の山脈に囲まれる。湖面標高 456m。湖に大小 336の河川が流入し,セレンガ,バルグジン,ベルフニャヤアンガラなど大きな川は河口に三角州を形成している。流出河川はアンガラ川のみで,湖の南西部北岸から北流してエニセイ川に合流する。湖中には多数の島があり,オリホン島,大ウシカニー島が大きい。世界で最も透明度の高い湖の一つで,最大透明度 40.5m。水温は低く,8月でも 10~12℃にすぎない。1~5月は結氷。動植物が豊富で,固有種の多いことで知られている。サケ類のオームリ,ハリウスの漁獲を中心に漁業も盛んである。湖上航路があり,木材流送も行なわれ,冬季には氷上道路が開通する。沿岸主要都市はスリュジャンカ,バイカリスク,バーブシキン。アンガラ川が流れ出る地点の東岸に位置する集落リストビャンカには科学アカデミーの湖沼学研究所がある。観光シーズンにはイルクーツクから訪れる観光客が多い。1996年世界遺産の自然遺産に登録。

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