日本大百科全書(ニッポニカ) 「サラニュー」の意味・わかりやすい解説
サラニュー
さらにゅー
Sarayū
古代インドの神話にみえる女神。元来この名は「すばやい女」を意味する。ベーダ神話に現れるヤマ(閻魔(えんま))とヤミーの双生児、およびアシュビン双神の母とされているが、伝承がまちまちなためその個性は判然としない。古代インドの神話集成である『ブリハッド・デーバター』によれば、彼女はトバシュトリの双生児(兄はトリシラスという)の1人として生まれ、太陽神の1人であるビバスバットに嫁いでヤマとヤミーを産んだが、出産後、自分によく似た別の女をつくりだして彼らの養育を託し、自らは雌馬と化して消え失せた。それとは知らず、この女と交わって息子マヌをもうけた夫は、のちに事の真実を知って自ら雄馬となり、彼女の後を追う。再会した夫はふたたび交わろうとするが、あわてた彼はそのおりに精液を地にこぼしてしまう。彼女がこの香りをかぐと2人の美男子が誕生し、それがナーサラティヤとダステ、すなわちアシュビン双神となったと伝えられる。
[原 實]