改訂新版 世界大百科事典 「ショファル」の意味・わかりやすい解説
ショファル
shofar
古代イスラエルの角笛。牡羊,牡ヤギの角でつくる。前2千年紀から用いられ,旧約聖書にもしばしば登場する。70年のエルサレム神殿破壊後も,ひきつづき今日までユダヤ教徒のあいだで命脈を保っている唯一の宗教楽器。かつては野営に関するさまざまの合図として,また悪霊よけの呪術,戦い(例えばヨシュアによるイェリコ攻略)などに魔術的な騒音楽器として用いられ,やがて第二神殿期に宗教礼拝用に採用された。今日ではもっぱら,ユダヤ教の祭式(エルル月の朝の礼拝後,新年祭,贖罪日など)で吹かれる。いくつかの吹き方の基本パターンが知られているが,実際にはその旋律形態や音色は,離散コミュニティの伝承や奏者個人により,また楽器のサイズや形状によりまちまちである。ふつうには原音とその5度およびオクターブ上の音が出るくらいで,音色は素朴で野性的な叫びに似ている。
執筆者:水野 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報