動物の角をほぼ原形のまま音作りに利用する各種管楽器の俗称。広義にはそれらの子孫に当たる楽器も含めていう。角の先端を加工して孔をあけ,唇の振動を利用して吹き鳴らすものが多い。ふつうは湾曲した末広がりの円錐管をなす。狩猟採集段階以来の楽器で,所在例は洋の東西を問わない。角を意味する語がそのまま楽器名となった場合も多い。中国で軍楽等に用いられた角(かく)や,ユダヤ教のショファル等がそれで,前者は仏画の奏楽場面にも登場し,日本の阿弥陀来迎図にまで及んでいる。洋楽のホルン,コルネット等も金属製になってはいるが,角から来た名であり,ビューグルは〈牛飼いの角笛〉という意味のフランス古語に由来している。これらの多くは放牧,狩猟,警備,軍事等に関連して信号用などに,あるいは宗教や呪術に関連して用いられてきた。17世紀に狩猟用ホルンの管が細く長くなり,また携帯便利な円環状の巻き方で作られるようになって,これが宮廷や劇場等の管弦楽にも利用され,以後ホルンは大発展をとげる。一方,ビューグルは軍隊等に,いわゆる信号ラッパとして定着する。かつて日本の軍隊が用いたのも,今日自衛隊が用いているのもこれである。19世紀には弁やキーなどの付加により演奏能力の向上が図られた。サクソルン,チューバなどの新楽器も,ビューグル改良の試みを徹底的に推し進めた結果の産物と見ることもできる。なお今日では,複雑な転調や変化音も自在にこなす本格的設計のビューグルと,前述の信号ラッパとの中間ともいえそうな,簡易な設計のビューグルも作られており,パレード等のビューグル・バンドはこれを用いることが多い。
執筆者:関根 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物の角の円錐(えんすい)管をそのまま利用するか、あるいはそれに似せて金属でつくった笛の総称。金属製であっても、起源が角製であったことがヨーロッパ諸語の例からもわかる。アフリカや南北両アメリカ大陸で独自に考案され分布している例に加えて、西アジアに由来しユーラシア大陸に広く伝わっていった例も多い。発音方式としては、角の先端にあけた穴に口を当て、両唇を振動させながら円錐管の中の気柱の共振で増幅ないし変音するので、リップ・リード系気鳴楽器に分類される。狩猟採集での信号、宗教儀礼での音響的結界形成、軍楽などの合奏音楽に利用される。音は遠くまで届くが、倍音調整によっても二、三しか音高が区別できないので、複数奏者が交互に発音して旋律や和音をくふうしたり(西アフリカ)、他の楽器との合奏に供したり(ヨーロッパ)する。近年は、弁や鍵(キー)をくふうして1本から多くの音が出せるものもある。
[山口 修]
…〈角(つの)〉の意から出た楽器名。広義には動物の角をそっくり用いた吹奏楽器のこと,またそれを祖とする楽器のことで,いわゆる角笛(つのぶえ)である。末広がりの〈円錐管〉を,呼気流と唇の振動とで鳴らす楽器がほとんどである。…
※「角笛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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