改訂新版 世界大百科事典 「ゼイベキ」の意味・わかりやすい解説
ゼイベキ
zeybek
18世紀以後の西アナトリアにおいて隊商路の護衛,道案内,コーヒー店経営などを通じて台頭した一種の任俠・無頼集団。この集団の起源は明らかではないが,元来はこの地方の治安維持にたずさわる不正規兵であったと推定される。18世紀以後,オスマン帝国と西ヨーロッパ諸国との間の地中海貿易が拡大すると,エーゲ海東岸の貿易港イズミルが勃興し,その後背地である西アナトリアの綿花,穀物,果実,畜産品などが,ラクダによる隊商によってイズミルに出荷された。この隊商路上に位置する各地方に,エフェefeとよばれる指導者たちのもとに結集したゼイベキたちは,通行の安全を保証する代りに,一種の通行税を要求した。彼らは,男らしさ,義俠的精神などによって,また,独特の衣装と舞踊とによって知られた。しかし1820年代末以降,オスマン帝国のスルタンは,彼らの活動を自由な貿易を阻害するものとして,これを禁じたため,彼らは匪賊化した。第1次世界大戦後,ギリシア軍が西アナトリアに侵攻すると,彼らはこれと戦い,トルコの祖国解放運動(トルコ革命)の一端を担った。
執筆者:永田 雄三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報