イズミル(読み)いずみる(英語表記)zmir

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イズミル」の意味・わかりやすい解説

イズミル
いずみる
zmir

トルコの小アジア半島西部、エーゲ海のイズミル湾に臨む港湾都市。イズミル県の県都。人口223万2265(2000)。イスタンブールアンカラに次ぐトルコ第三の都市であり、古代ギリシア名はスミルナSmyrna。三方山地で囲まれて深く湾入した天然の良港に恵まれ、道路、鉄道の発達によって広い後背地とも結び付き、トルコの重要な貿易都市として市街は活況を呈する。綿織、皮革、ビール、オリーブ油、染料、たばこなどの工業も発達する。毎年8~9月には国際見本市が開かれる。古来、地震による被害が大きく、史跡には恵まれない。考古博物館がある。近年の人口急増を象徴するかのように、丘陵上にはゲジェコンドゥ(一夜(いちや)建て)とよばれる急造住宅がひしめいている。

[末尾至行]

歴史

紀元前11世紀ごろにアカイア人によって建設され、リディアフリギアなどの支配を経て、紀元後133年からローマ帝国領となった。11世紀以後この町はトルコ人の支配下に入り、17世紀以後ヨーロッパ諸国とオスマン・トルコ帝国との地中海貿易の拠点として繁栄すると、ペロポネソス半島やエーゲ海諸島から多数のギリシア人が移住した。第一次世界大戦後オスマン帝国が滅亡すると、1919年5月に、この町を中心にギリシア人による「イオニア国家」の建設を口実にギリシア政府は軍隊を派遣したが、トルコ人の抵抗によって失敗した(トルコ革命)。

[永田雄三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イズミル」の意味・わかりやすい解説

イズミル
İzmir

トルコ西部の港湾都市で,同名県の県都。古代のスミルナ。エーゲ海から深く湾入するイズミル湾奥に位置する。地中海世界ではアテネに次いで過去 5000年間歴史的重要性をもち続けてきた都市で,前 3000年にさかのぼり,トロイとほぼ同時代に建設された。前 1000年頃にはギリシアの植民都市であったことが知られ,前7世紀に都市国家となったが,前6世紀頃リュディアに征服された。前4世紀にアレクサンドロス大王によって再建され,小アジアにおける主要都市となった。のちローマの属州アジアに編入され,ビザンチン時代はサモス海軍管区の首都となり,14世紀にはトルクメン人に占領された。十字軍やチムールの支配を受けたのち,1425年頃オスマン帝国領となった。 1919年5月ギリシア軍に占領されたが,22年トルコ軍が奪還した。第2次世界大戦後は急激に発展し,その位置条件もあって,NATO (北大西洋条約機構) の南部軍司令部がおかれている。工業ではイスタンブールに次ぎ,食品,セメント,綿・毛織物を生産し,化学工場や機械工場もある。中東一の国際見本市も毎年開かれ,後背地の農産物を輸出する。付近にはエフェソス,ペルガモンなどの有名な古代遺跡があり,観光地としても発達しつつある。人口 175万 7414 (1990) 。

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