チオニトロシル

化学辞典 第2版 「チオニトロシル」の解説

チオニトロシル
チオニトロシル
thionitrosyl

NS原子団のこと.NS単量体が陽イオンまたは陽性基としてはたらく場合,IUPACの名称ではチオニトロシルというが,チアジル(thiazyl)ともいう.とくに重合体の場合,ポリチアジル(たとえば,N3S3はトリチアジルイオン)といわれる.NSは金属錯体の配位子にもなり,チオニトロシルとよばれる.【】フッ化チオニトロシル:NSF(65.07).N4S4にAgF2またはHFを作用させると生成する.無色.折れ線形構造.S-F約1.65 Å,N-S約1.45 Å.∠N-S-F約116°.融点-89 ℃,沸点0.4 ℃.湿気で分解する.液体は重合して三量体にかわりやすい.[CAS 18820-63-8]【】トリチアジル三フッ化物:N3S3F3(195.27).1,3,5-トリフルオロ-シクロ-1,3,5-トリチア-2,4,6-トリアザンともいう.N,S交互に結合した六員環の各SにFが結合している.無色の結晶.融点74.2 ℃,沸点92.5 ℃.ベンゼンに可溶.空気に触れなければ室温でも安定である.[CAS 14097-07-5]【】三フッ化チオニトロシル:NSF3(103.07).安定な液体.Sを中心に四面体型構造.N-S約1.42 Å,S-F約1.55 Å.∠F-S-F約94°.融点-72.6 ℃,沸点27.1 ℃.[CAS 15930-75-3]【】シクロチオトリチアジル硝酸塩:[N3S4](NO3).シクロ-1,2,4,6-テトラチア-3,5,7-トリアゼパニウム硝酸塩ともいう.七員環の陽イオンは電子が非局在で,NO3とイオン結合している.【トリス(ジメチルジチオカルバマト)(チオニトロシル)モリブデンMo[S2CN(CH3)2]3NSはチオニトロシル錯体の一例であるが,これ以外にも多くのものが得られている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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