日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョッパ制御」の意味・わかりやすい解説
チョッパ制御
ちょっぱせいぎょ
chopper control
直流電流を高頻度、高速で通電、遮断する装置(チョッパ)による制御。リアクトル、ダイオード、コンデンサーと組み合わせて、直流電圧を制御する。小容量のチョッパは従来から弱電機器の定電圧電源等に用いられていたが、パワーエレクトロニクスの発達(チョッパに用いるサイリスタの大容量化)により、鉄道車両にも応用された。
鉄道車両のチョッパ制御には、大きく分けて、直流直巻電動機に使用する「電機子チョッパ」と、直流複巻電動機に使用し、分巻界磁回路への電流のみを制御する「界磁チョッパ」の二つの方式がある。
鉄道車両では、従来から、駆動用電動機として直流電動機を使用し、速度制御は抵抗を挿入する方式が用いられていた(抵抗制御)。電機子チョッパにより、力行(りっこう)(慣性だけではなく、動力機関からの力を受けながら走行している状態)時に抵抗器を用いない連続的な電圧変換が可能となり、抵抗損失が少なくなった。また、ブレーキ時には、チョッパ制御による昇圧を行い、電力回生が可能になり、回路の接触器を大幅に減らすことができるというメリットが得られたが、コスト面では不利であった。
界磁チョッパでは、基本は抵抗制御で、分巻界磁回路に対しチョッパ制御を用いる。抵抗制御が残るため接触器の数も比較的多いが、チョッパ装置が小型でよいため、低価格で回生ブレーキが可能であるというメリットがあった。
チョッパ制御は、1960年代後期より、地下鉄電車や通勤電車に採用されたが、その後のVVVFインバーターと交流電動機の普及により新車には採用されなくなっている。
[石津一正・川崎淳司]