電車や電気機関車,エレベーターなど,電動機によって運転される乗物に用いられる制動システム。電動機を発電機として利用することにより車両などのもっている位置エネルギーや運動エネルギーを電気エネルギーに変換し,これを架線を通して他の車両などの動力源として供給する方式のもの。正式には電力回生ブレーキregenerative brakeと称する。速度の高いところで大きな制動力が得られる利点があるが,反面,速度が低くなると制動力が弱くなるので,ふつう他のブレーキと併用される。電気運転方式により直流回生ブレーキと交流回生ブレーキに分類される。直流回生ブレーキには,電動機の界磁電流を制御し定電圧特性をもたせる方式,チョッパーの昇圧機能を利用する方式などがある。交流回生ブレーキには,使用する電動機により,直流電動機方式と交流電動機方式がある。前者では電動機の発生する直流を交流に変換するためにサイリスターコンバーターなどが用いられ,後者には交流整流子電動機を用いる方式のほか,スイスの三相交流電化線区で実用されている誘導電動機を使用した方式もある。
執筆者:長岡 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…後者は容量が大きくとれるが,電動車の場合はスペースが少なく,新幹線電車以外ではあまり用いられていない。 電気ブレーキは,主電動機を減速時には発電機として用い,その際コイルに生ずる力を利用してブレーキ作用を行わせるもので,このときに発生する電力を抵抗器で放熱する発電ブレーキと,架線側へ返す電力回生ブレーキ(回生ブレーキともいう)があるが,最近ではサイリスターなどの半導体技術(チョッパー制御など)の進歩により,節電ができ,放熱による周囲の温度上昇(とくに地下鉄)がない回生ブレーキを採用している。なお,新幹線用電車は,とくに高速化と大量輸送用に作られており,高速性能を重視した台車,パンタグラフなどを採用し,かつトンネル内での高速走行時の気圧の変化を少なくするため気密構造としている。…
…なお,自動車の走行中,クラッチを切らずにアクセルから足を離したときに作用するエンジンブレーキは,エンジンの圧縮抵抗,エンジン・変速機の機械摩擦を利用した摩擦ブレーキとみなすことができる。
[電気ブレーキ]
電磁ブレーキや磁極間におかれた導体が移動するときに生ずる渦電流による制動作用を利用した渦電流ブレーキを含めることもあるが,ふつう電気ブレーキといえば電動機を発電機として用いる発電ブレーキや電力回生ブレーキをいう。発電ブレーキは,回転動力源として用いている電動機を,減速させたいときに発電機として働かせ,その回転を止める方向に働くトルクをブレーキに利用するものである。…
※「回生ブレーキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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