世界大百科事典(旧版)内のツェーゼン,P.vonの言及
【グリンメルスハウゼン】より
…彼の名声はひとえに《ジンプリチシムスの冒険》の爆発的な成功によるものであり,《放浪の女クラーシェ》(1670),《変り者シュプリングインスフェルト》(1670),《ふしぎな鳥の巣》(1672‐73)など一連のいわゆる悪者小説はすべてそれの〈続編〉として宣伝され,それら以前に書かれた《風刺の巡礼》(1666‐67),《純潔なヨーゼフ》(1667)などの作品も〈ジンプリチシムスの作者による〉ことがあらためて強調された。グリンメルスハウゼンの文学的位置は,従来いわゆるドイツ教養小説の系譜のなかでのみ論じられるきらいがあったが,バロック時代の主流を占めていたツェーゼンPhilipp von Zesen(1619‐89)ら教養派の文学者たちや,貴族的な小説タイプである英雄恋愛小説との対比による考察も欠かせない。グリンメルスハウゼンにも《ディートワルトとアメリンデ》(1670),《プロクシムスとリンピーダ》(1672)という〈理想小説〉があり,しかもそこに作者の本名が名のられているという事実は,野性味あふれる写実的な健康な笑いの世界の隠れた一面をうかがわせるものである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」