内科学 第10版 「先天性血小板機能異常症」の解説
先天性血小板機能異常症(血小板/凝固系の疾患)
に先天性血小板機能異常症の鑑別診断を示した.
(1)血小板無力症(thrombasthenia,Glanzmann血小板無力症)
常染色体劣性遺伝で,膜糖蛋白(GP)Ⅱb/Ⅲa複合体(インテグリンαⅡb/β3,フィブリノゲン受容体)の欠損/異常により,血小板凝集機能の低下をきたし,出血傾向をみる.血小板数,血小板形態は正常で出血時間延長,ADP,コラーゲンなどによる血小板凝集の欠如がみられ,血餅退縮能低下を認める.確定診断はGPⅡb/Ⅲa複合体欠損の証明である.治療は出血に対する対症療法が中心となる.外科手術の際などには血小板輸血を行う.
(2)Bernard-Soulier症候群
常染色体劣性遺伝で,GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体(von Willebrand因子受容体)の欠損/異常による.比較的まれな疾患であるが,出血傾向は合併する血小板減少もあるため比較的強く,紫斑,鼻出血,歯肉出血が幼少時よりみられる.検査所見では血小板減少(軽度),巨大血小板の出現を特長とし,血小板粘着能低下(ガラスビーズ法),リストセチン凝集が欠如している.May-Hegglin異常や特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)との鑑別を要す.確定診断はGPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体欠損を証明する.根治療法はなく,出血に対する対症療法が中心となる.出血症状が強い場合や外科手術の際には血小板輸血を行う.
(3)放出異常症
放出そのものの障害(放出機構異常症)と放出物質の欠如(ストレージプール病)が含まれる.一般にこの機序による障害では出血傾向は軽微であり,出血時間も軽度の延長にとどまることも多い.
このほかコラーゲン不応症,GPⅠa/Ⅱa複合体欠損症(コラーゲンとの結合障害による粘着能低下),GPVⅠ欠損症(GPVⅠとコラーゲンとの結合障害による粘着能低下),血小板プロコアグラント活性欠損症(Scott症候群)などが報告されている.
血小板機能異常症を疑った場合まず血小板凝集能,血小板粘着能(血小板停滞率)を検査するとともに,von Willebrand因子抗原(VWF:Ag),von Willebrand因子リストセチンコファクター活性(VWF:RCo)を検査して頻度の高いvon Willebrand病を除外する.先天性血小板機能異常症は図14-11-9に従って鑑別する.一般に血小板機能検査は血小板に影響する薬剤の服用中止後1週間以上経過してから行う必要がある.[村田 満]
■文献
村田 満:出血と血栓がおこる病気.血液疾患のとらえかた(池田康夫編),pp136-145, 文光堂,東京,2001.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報