トリアセテート(その他表記)triacetate

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリアセテート」の意味・わかりやすい解説

トリアセテート
triacetate

合成繊維セルロース系の3酢酸繊維素による繊維で,製造法はアセテート繊維とほとんど同じであるが,アセテートがセルロースの水酸基3個に対して反応する酢酸分子の割合が 2.5個であるのに比べ,3個すべて反応結合させた繊維。アセテートより強度と耐熱性がすぐれ,合成繊維に近い。コストはアセテートよりやや高い。最初の工業化は 1914年であるが,一時生産中止となり,54年にアメリカで再び工業化されるようになった。日本では 67年に三菱アセテートがソアロンの商標名で生産,販売を開始した。吸湿性が少く,皺になりにくく,プリーツ性にすぐれ,ソフトな肌ざわりをもつことが特徴。また,アセテートの溶融点が 260℃であるのに対し,トリアセテートは 300℃と耐熱性にすぐれており,特に熱処理加工されたものは,250℃の高温にさらされても,アセテートの有する熱可塑性を抑えることができる。他繊維との混紡ができるため,用途は高級婦人衣料から一般衣服地まで幅広く,また,電線被覆などの工業用としても利用されている。

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世界大百科事典(旧版)内のトリアセテートの言及

【アセチルセルロース】より

…酢酸繊維素,セルロースアセテートcellulose acetate(略してアセテート)ともいう。セルロースの酢酸エステルである三酢酸セルロース(トリアセテート)と第二次酢酸セルロース(アセテート)の2種類が製造されている。1869年にフランスのシュッツェンベルジェP.Schutzenberger(1829‐97)がセルロースを無水酢酸と加熱して作ったのが始まりで,94年にイギリスのクロスC.F.CrossとベバンE.J.Bevanはそれに硫酸または塩化亜鉛を脱水剤として加えると速やかに反応が進行することを見いだした。…

【アセテート繊維】より

…アセテートレーヨンacetate rayonともいい,略してアセテートともいう。セルロースアセテート(第二次酢酸セルロース,単にアセテートともいう)および三酢酸セルロース(トリアセテート)で作られる繊維をともにアセテート繊維という。アセテートは1869年に発見され,第1次大戦中飛行機の翼の塗布用として用いられていたが,戦後その用途がなくなってから,イギリスで人造絹糸として用途開発され,1921年商標セラニーズCelaneseで初めてアセテート繊維が市場に出された。…

【半合成繊維】より

…理論的用語のため一般市場ではほとんど使われない。セルロースをアセチル化してアセチルセルロースに変え,これを溶剤に溶かして紡糸したアセテートおよびトリアセテート繊維は,代表的な半合成繊維である。綿やパルプなどを構成するセルロースは[C6H7O2(OH)3]n(nは重合度)という構造式をもつが,水酸基-OHは反応性に富みアセチル化されると,[C6H5O2(OH)3-p(OCOCH3)p]nで表される,有機溶媒に可溶のアセチルセルロースに変わる。…

※「トリアセテート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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