2種類以上の異なった繊維を混ぜて糸を紡ぐことを混紡といい,できた糸を混紡糸mixed yarnという。ポリエステルと綿,ポリエステルと羊毛のように2種類の混紡を二者混紡,3種類の繊維では三者混紡と呼ばれる。混紡は種類の異なる繊維の性能を高め,欠点を補い合うために行われる。たとえば,ポリエステルと綿の混紡では,吸湿性はないがしわにならないポリエステルと,吸湿性は高いがしわのよりやすい綿とを混ぜて糸に紡ぐことにより,アイロンがけの要らないワイシャツ生地などへ利用される。35~55%ポリエステルと65~45%羊毛の混紡によって,軽くてしわになりにくく,風合いのよい強力な布が得られ,紳士用および婦人用外衣,コート,セーター,スカート,手編糸に使用される。
70~80%羊毛-30~20%ナイロン混紡は,風合い,引裂・摩擦強度および保温性を向上させ,50~55%アクリル-50~45%羊毛混紡は,風合い,プレス保持性および保温性の向上が実現される。その他,ビニロン-ポリノジック,綿-ビニロン,ポリプロピレン-羊毛,ポリエステル-アクリル-羊毛(50%-25%-25%),羊毛-ナイロン-レーヨン(50%-20~30%-30~20%)などの混紡からは,引裂・摩擦強度やしわ回復性に優れた糸が作られ,外衣,メリヤス,セーターに用いられる。混紡は紡績工程の初めに近い工程で行うほうがよい混紡状態になり,一般に混打綿工程から粗紡工程の間で行われる。
混紡の場合のステープル(短繊維)と違ってフィラメント(長繊維)を混合する混繊がある。これは2種類の繊維のマルチフィラメント糸を混ぜ合わせたもので,日本で1967年に初めて行われた。美観上および性能上優れたフィラメント糸になり,混繊糸と呼ばれる。ナイロン-アセテート,トリアセテート-ナイロン,ポリエステル(芯)-アセテート(外側でかさ高加工),ポリエステル-ナイロンが衣服や室内装飾布などとして市販されている。フィラメントの紡糸後,延伸あるいはテクスチャード加工の工程で混繊が行われる。
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
2種以上の異なる繊維を混合して紡績すること。これを糸にしたものが混紡糸であり、織物では経緯(たてよこ)糸の一部、または全部に混紡糸を用いたものが混紡織物である。混紡するのは、(1)ある繊維が単独では使用目的にかなった糸を紡績することが困難であるとき、異なる繊維を混紡し、両者のもたない性能を発揮させるため、(2)単独の繊維だけでは消費の目的からみて不適当であるため、原料を安価にしようとする経済的理由から、(3)原料の不足を補うため、その繊維の代用として、(4)一つの繊維だけでは紡績がしにくいとき、他の繊維を加え可紡性をよくするため、などである。
混紡は、1本の糸の中へ均質に繊維を混紡することが必要であるが、紡績工程のうちのどこが行うかによって、原綿混紡、ラップ混紡、スライパー混紡などに分けられる。原綿混紡は混打綿工程前に、ラップ混紡は梳綿(そめん)工程前に、またスライパー混紡は練条(れんじょう)工程で行われる。これらは繊維の種類や性能を考慮してもっとも適切な方法がとられる。
混紡の組合せ効果は、混紡繊維の組合せと混紡率によって決められる。古くは天然繊維と天然繊維の混紡であったが、最近の傾向は、合繊または化繊と天然、合繊と化繊、化繊と化繊、合繊と合繊などと、二者の混紡だけでなく3種以上の混紡もあり、年とともに多様化していく傾向にある。このうち化合繊は、太さ・長さ・形などを自由に変えられるので、木綿や羊毛など天然繊維とあわせてつくることができ、従来からもっていた天然繊維の性能とあわせ、最適の状態が得られる。市場にある代表製品の混紡率は、一般にポリエステル(テトロン、テリレンなど)と木綿では、65~75%と35~25%に、ポリアクリル(ボンネル、カシミロンなど)と羊毛では、50~55%と50~45%に、ナイロンと羊毛では、20~30%と80~70%となっている。
[角山幸洋]
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紡績工程による混合のこと.紡織繊維の特徴をそれぞれ生かして欠点を補い利用するために,各種繊維を混合して用いることが多い.たとえば,綿・スフ混紡,綿・ポリエステル混紡,毛・ポリエステル混紡,毛・アクリル混紡,麻・ポリエステル混紡などがある.混合するには紡績の最初から混合するものと,ロープ状の繊維束(スライバー状)にした繊維を混合する方法が主である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…羊毛では各種の色に染めた繊維を混合して糸を作ることが,深みのある色を出すのに必要だとされている。一般に天然繊維と化学繊維,ポリエステルとレーヨンなど異種繊維を混ぜて紡績することを混紡と呼び,産地,格付けの異なる原綿を混ぜることを混綿と呼ぶ。(11)ほかに風綿(風で舞い積もった繊維)の除去,温湿度制御などの補助的操作もある。…
※「混紡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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