混紡(読み)コンボウ(英語表記)mixed fiber spinning

デジタル大辞泉 「混紡」の意味・読み・例文・類語

こん‐ぼう〔‐バウ〕【混紡】

[名](スル)2種以上の異なる繊維をまぜ合わせて紡績すること。「綿と化学繊維混紡

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精選版 日本国語大辞典 「混紡」の意味・読み・例文・類語

こん‐ぼう‥バウ【混紡】

  1. 〘 名詞 〙 二種以上の繊維を混ぜて糸をつむぐこと。また、そのようにつむいだ繊維。綿と毛、麻と綿、絹と綿などの天然材料を組み合わせるものと、化学繊維と天然繊維を混ぜてつむぐ方法とがある。
    1. [初出の実例]「紡績は必ず異種繊維と混紡しなければならぬのである」(出典:カポク繊維(1943)〈森田喜三郎〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「混紡」の意味・わかりやすい解説

混紡 (こんぼう)
mixed fiber spinning

2種類以上の異なった繊維を混ぜて糸を紡ぐことを混紡といい,できた糸を混紡糸mixed yarnという。ポリエステルと綿,ポリエステルと羊毛のように2種類の混紡を二者混紡,3種類の繊維では三者混紡と呼ばれる。混紡は種類の異なる繊維の性能を高め,欠点を補い合うために行われる。たとえば,ポリエステルと綿の混紡では,吸湿性はないがしわにならないポリエステルと,吸湿性は高いがしわのよりやすい綿とを混ぜて糸に紡ぐことにより,アイロンがけの要らないワイシャツ生地などへ利用される。35~55%ポリエステルと65~45%羊毛の混紡によって,軽くてしわになりにくく,風合いのよい強力な布が得られ,紳士用および婦人用外衣,コートセータースカート,手編糸に使用される。

 70~80%羊毛-30~20%ナイロン混紡は,風合い,引裂・摩擦強度および保温性を向上させ,50~55%アクリル-50~45%羊毛混紡は,風合い,プレス保持性および保温性の向上が実現される。その他,ビニロン-ポリノジック,綿-ビニロン,ポリプロピレン-羊毛,ポリエステル-アクリル-羊毛(50%-25%-25%),羊毛-ナイロン-レーヨン(50%-20~30%-30~20%)などの混紡からは,引裂・摩擦強度やしわ回復性に優れた糸が作られ,外衣,メリヤス,セーターに用いられる。混紡は紡績工程の初めに近い工程で行うほうがよい混紡状態になり,一般に混打綿工程から粗紡工程の間で行われる。

 混紡の場合のステープル(短繊維)と違ってフィラメント(長繊維)を混合する混繊がある。これは2種類の繊維のマルチフィラメント糸を混ぜ合わせたもので,日本で1967年に初めて行われた。美観上および性能上優れたフィラメント糸になり,混繊糸と呼ばれる。ナイロン-アセテート,トリアセテート-ナイロン,ポリエステル(芯)-アセテート(外側でかさ高加工),ポリエステル-ナイロンが衣服や室内装飾布などとして市販されている。フィラメントの紡糸後,延伸あるいはテクスチャード加工の工程で混繊が行われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「混紡」の意味・わかりやすい解説

混紡
こんぼう

2種以上の異なる繊維を混合して紡績すること。これを糸にしたものが混紡糸であり、織物では経緯(たてよこ)糸の一部、または全部に混紡糸を用いたものが混紡織物である。混紡するのは、(1)ある繊維が単独では使用目的にかなった糸を紡績することが困難であるとき、異なる繊維を混紡し、両者のもたない性能を発揮させるため、(2)単独の繊維だけでは消費の目的からみて不適当であるため、原料を安価にしようとする経済的理由から、(3)原料の不足を補うため、その繊維の代用として、(4)一つの繊維だけでは紡績がしにくいとき、他の繊維を加え可紡性をよくするため、などである。

 混紡は、1本の糸の中へ均質に繊維を混紡することが必要であるが、紡績工程のうちのどこが行うかによって、原綿混紡、ラップ混紡、スライパー混紡などに分けられる。原綿混紡は混打綿工程前に、ラップ混紡は梳綿(そめん)工程前に、またスライパー混紡は練条(れんじょう)工程で行われる。これらは繊維の種類や性能を考慮してもっとも適切な方法がとられる。

 混紡の組合せ効果は、混紡繊維の組合せと混紡率によって決められる。古くは天然繊維と天然繊維の混紡であったが、最近の傾向は、合繊または化繊と天然、合繊と化繊、化繊と化繊、合繊と合繊などと、二者の混紡だけでなく3種以上の混紡もあり、年とともに多様化していく傾向にある。このうち化合繊は、太さ・長さ・形などを自由に変えられるので、木綿や羊毛など天然繊維とあわせてつくることができ、従来からもっていた天然繊維の性能とあわせ、最適の状態が得られる。市場にある代表製品の混紡率は、一般にポリエステル(テトロン、テリレンなど)と木綿では、65~75%と35~25%に、ポリアクリル(ボンネル、カシミロンなど)と羊毛では、50~55%と50~45%に、ナイロンと羊毛では、20~30%と80~70%となっている。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「混紡」の意味・わかりやすい解説

混紡【こんぼう】

2種以上の繊維を混ぜ合わせて紡績すること。絹と合繊,綿と合繊,毛と合繊などが多い。初め安価な絹・毛織物などを作るために用いられたが,現在では天然繊維の長所を生かし,短所を合繊で補って丈夫な織物とするために行われる。
→関連項目交織

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化学辞典 第2版 「混紡」の解説

混紡
コンボウ
mix spinning

紡績工程による混合のこと.紡織繊維の特徴をそれぞれ生かして欠点を補い利用するために,各種繊維を混合して用いることが多い.たとえば,綿・スフ混紡,綿・ポリエステル混紡,毛・ポリエステル混紡,毛・アクリル混紡,麻・ポリエステル混紡などがある.混合するには紡績の最初から混合するものと,ロープ状の繊維束(スライバー状)にした繊維を混合する方法が主である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「混紡」の意味・わかりやすい解説

混紡
こんぼう
mixed spinning

種類の違った繊維を混ぜて紡績すること。種類の違う繊維の長所を取入れて,品質や価格面ですぐれた糸をつくり出すのが目的。糸を紡績工程に掛ける前に重さの割合で行う原綿混紡,梳綿工程の前に行うラップ混紡 (展綿調合) ,練条工程で行うスライバ混紡 (練条調合) などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の混紡の言及

【紡績】より

…羊毛では各種の色に染めた繊維を混合して糸を作ることが,深みのある色を出すのに必要だとされている。一般に天然繊維と化学繊維,ポリエステルとレーヨンなど異種繊維を混ぜて紡績することを混紡と呼び,産地,格付けの異なる原綿を混ぜることを混綿と呼ぶ。(11)ほかに風綿(風で舞い積もった繊維)の除去,温湿度制御などの補助的操作もある。…

※「混紡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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