改訂新版 世界大百科事典 「ナレースエン」の意味・わかりやすい解説
ナレースエン
Naresuan
生没年:?-1605
タイ,アユタヤ朝のスコータイ王家第2代の王。在位1590-1605年。1569年ビルマ(現ミャンマー)はアユタヤを占領したが,ナレースエンは少年時代人質としてビルマに6年間居住した経験をもつ。生来の武将といわれ,ビルマ王の命を受けて各地で戦闘に従事した。84年アユタヤはビルマの内紛に乗じて独立を宣し,アユタヤの再支配を目ざして侵攻するビルマ軍を数次にわたり撃退して独立を全うした。90年父王マハータンマラーチャを継いで王となったナレースエンは,その後も繰り返されたビルマ軍の侵攻を防ぐにとどまらず,2度にわたりビルマ遠征を行った(1594,1599)。ナレースエンは,それまで自立性の強かった地方国に実効支配を及ぼし,アユタヤに初めて中央集権的統治体制を確立した王といわれる。このとき以降160年以上もの間,アユタヤは東南アジア大陸部の大国として繁栄を続けるにいたる。ナレースエンは海外貿易の振興に努め,スペインとの間に修好通商条約を締結した。アユタヤには多数の外国人が居住し,日本人町も形成され,1593年の戦役には500人の日本人義勇軍が参加した。
執筆者:石井 米雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報