日本大百科全書(ニッポニカ) 「バスカービル家の犬」の意味・わかりやすい解説
バスカービル家の犬
ばすかーびるけのいぬ
The Hound of Baskervilles
イギリスの推理作家コナン・ドイルのシャーロック・ホームズものの長編。1902年作。四編の長編中、最高傑作の評価が高い。ダートムアの旧家バスカービル家の当主ユーゴーが悶死(もんし)した現場の沼沢地には、大きな犬の不思議な足跡があった。ホームズはこの怪奇の謎(なぞ)を探ろうと現地を訪れる。沼に引き込まれる馬、どこからともなく聞こえるうめき声。ダートムアの陰気で怪奇な迫真の描写は、ドイルの作品のなかでも光る。そしてそれが単に怪奇談に終わらず、推理的な合理性のある解決で結ばれるところにこの作品の価値があり、推理小説ベストテンの古典的作品として、よくリストアップされる。
[梶 龍雄]
『阿部知二訳『バスカヴィル家の犬』(創元推理文庫)』