改訂新版 世界大百科事典 「バヤニハン」の意味・わかりやすい解説
バヤニハン
bayanihan
フィリピン社会でみられる伝統的相互扶助慣行のこと。村落内の道路・橋・水路作りなど住民の共同利益,共通課題解決のための無償労働提供から,農作業における労働力の互助交換,家屋の建築・移動,出産,結婚,葬儀など生活面での助け合いまですべてこの概念の中に入る。その意味でこれはきわめて一般的,包括的用語といえよう。類似の用語としてスユアン,バタリス,ダマヤン,ボリガイなど数多くみられるが,これらは使われ方にある程度限定があって,例えばスユアンは農作業での労働力互助交換,バタリスとダマヤンは生活面での助け合い,ボリガイは共同利益のための無償労働提供といった具合である。なおフィリピンに限らずどこでもそうであるように,バヤニハンもしだいにすたれつつあることはまちがいない。
執筆者:梅原 弘光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報