改訂新版 世界大百科事典 「バルラームとヨアサフ」の意味・わかりやすい解説
バルラームとヨアサフ
中世キリスト教世界で広く知られた民衆娯楽文学作品で,《バルラームとヨサファト》の表題でも知られる。ギリシア語版(編纂者は8世紀の神学者ダマスクスのヨアンネスといわれる)から派生した。仏陀伝説のキリスト教版で,ヨアサフJoasaph(ヨサファトJosaphat)の名はアラビア語ブダサフを経て菩薩にさかのぼる。インドの王子ヨアサフは,父王アベンネルAbennerのあらゆる予防措置にもかかわらず,煩悩を知り,修道士バルラームBarlaamの教化で使徒トマスがインドに伝えたキリスト教を受け入れ,自分の民を改宗に導き,彼らに善行を施すが,やがて王国を捨てて師の許に赴き,敬虔な隠者として一生を送るというものである。ギリシア人はヨアサフを,ロシア人はバルラームとアベンネルまで教会聖人暦に収める。トルストイに決定的影響を及ぼしたといわれる。
執筆者:渡辺 金一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報