改訂新版 世界大百科事典 「ヨアンネス」の意味・わかりやすい解説
ヨアンネス(ダマスクスの)
Iōannēs
生没年:675ころ-749ころ
キリスト教の教義を初めて体系的にまとめた神学者。ラテン名はヨハネスJohannes。東方正教会では最後の教父とされる。シリアのダマスクスでキリスト教徒の名門に生まれ,イスラム・カリフ王朝下で役人をつとめたが,ほどなくして修道生活を志し,パレスティナの聖サバス修道院に入った。ビザンティン帝国のイコノクラスムに際しては,726年より3点の論考でイコン崇敬を擁護し,それがイコン擁護派の理論的根拠となった。主著《知識の泉》は,哲学,異端,正統信仰の3部に分かれ,特に第3部はギリシア教父に依拠しながらキリスト教の教義を初めて体系的にまとめた著作として,後代の東西両教会に大きな影響を与えた。また聖歌作者としても著名で,その作品は現在も東方正教会の典礼で用いられている。パウロ書簡への注解,説教数点が現存するほか,西洋に伝わった仏陀伝説《バルラームとヨサファト物語》の編者とされている。
執筆者:森安 達也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報