日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンパ・インディアン」の意味・わかりやすい解説
パンパ・インディアン
ぱんぱいんでぃあん
Panpas Indians
アルゼンチン中部の大草原地帯(パンパ)に住んでいた南アメリカ先住民の総称。おもな部族集団としてプエルチェ、ケランディがいた。ラ・プラタ川北側の草原地帯にいたチャルア、パタゴニア地方に住んでいたテウエルチェと人種的、文化的に近い関係にあり、いずれも身体的には短頭、高身長、広く高い鼻を特徴とし、農耕を行わず、家畜をもたず、数家族からなるバンドごとに一定のテリトリー内を食物を求めて移動していた。ボーラ(石をつけた紐(ひも))を振り回して投げ、動物の首や足に絡ませて、グアナコ(野生ラマ)やレア(ダチョウに似た鳥)を狩猟し、食べられる植物を採集していた。もともとは徒歩で移動・狩猟を行い、100人を超すバンドはなかったが、ヨーロッパから馬が伝来するとともに狩猟がより効率的になり、それとともに数百人からなるバンド的集団をつくることもあった。しかし、バンド以上の社会組織はもたず、人口密度もきわめて低かった。出自は父系で、父(夫)方居住婚を行っていた。さまざまな精霊を信じ、また至高神を信じていたが、至高神は世界を創造しただけで、その後は人々となんのかかわりももたないものとされていた。
[板橋作美]