日本大百科全書(ニッポニカ) 「フーフェランド」の意味・わかりやすい解説
フーフェランド
ふーふぇらんど
Chrstoph Wilhelm Hufeland
(1762―1836)
ドイツの医学者。ランゲンザルツァの医師の子として生まれる。イエナ大学、ゲッティンゲン大学で医学を学び、卒業後郷里で開業した。彼の講演がワイマール公に認められ、1793年イエナ大学教授に任ぜられた。1800年プロイセン宮廷医兼慈善病院長となってベルリンに移り、1805年ベルリン大学医学部長、1810年には病理学および内科教授となった。深い学識と高潔な人柄は名医として世の尊敬を受けた。50年間の臨床医としての経験をもとにして『医学必携』Enchiridion Medicum(1836)を出版した。この本の一部は日本の幕末の緒方洪庵(おがたこうあん)により『扶氏経験遺訓』、杉田成卿(せいけい)により『済生三方(さいせいさんぽう)付医戒』、青木浩斎(こうさい)(伊王野坦(いおうのひろし)、1814―1883)により『察病亀鑑(きかん)』として翻訳刊行された。杉田により訳された『医戒』には医師の倫理について詳述されている。そのほか『健康学概論』『病理学論』『長生法』など、著書、論文は400余ある。
[中山 沃]
『杉田成卿訳・杉本つとむ解説『医戒――幕末の西欧医学思想』(社会思想社・現代教養文庫)』