化学辞典 第2版 「ブラウン管オシログラフ」の解説
ブラウン管オシログラフ
ブラウンカンオシログラフ
Braun tube oscillograph
ブラウン管を利用して,時間的に速く変化する電気現象を観測する装置.図はブラウン管内の電子ビームの偏向を示す略図で,左方から速度vで入射した電子ビームは偏向板 Y1,Y2 間の電場中に入って高電位側に引かれ,図のように湾曲した軌跡を描く.そして蛍光面に達したときは,電場のない場合に対してhのずれを生じる.このhの大きさは次のように電圧Vに比例する.
ここで,eは電子の電荷,mはその質量である.したがって,電圧Vの時間的変化をhで観測することができる.図のような垂直方向に電子ビームを変位させる垂直偏向板のほかに,水平方向に電子ビームを動かす水平偏向板が備えられ,これらの偏向板にかけられる電気信号が微弱なときは,内蔵されている増幅器を通してかけられる.ブラウン管オシログラフは,電磁オシログラフに比べて速い現象を測定できるもので,後者の限界が 104 Hz 程度に対し,前者は 1010 Hz に及ぶ.現在ではブラウン管オシログラフにいろいろな特殊機能を備えたシンクロスコープやサンプリングオシロスコープなどがつくられ,ことにシンクロスコープは一般に広く用いられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報