日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ボルテックスジェネレーター
ぼるてっくすじぇねれーたー
vortex generator
渦(うず)発生片のこと。航空機の翼の表面や胴体断面が複雑に変化している部分に、気流に対してわずかな角度をもたせ、ハの字形に並べて取り付けた5センチメートル角ほどのごく小さな翼をいう。この小翼に風を当てると翼端に渦の流れvortexが発生し、渦によって境界層が、空気抵抗は少ないが剥離(はくり)しやすい層流境界層から、抵抗は多いがエネルギーの豊富な乱流境界層へと変換され、バフェットbuffet(境界層の剥離によって生じる機体の不規則な振動)を防いだり、衝撃波の発生による剥離を防止する。また前記の性格からフィレットfillet(干渉抗力を減らすために、翼と胴体の結合部分を覆うもの)のかわりや、失速速度の低減、衝撃失速の防止による速度の向上などに用いられる。しかし、これに頼ると抵抗が増加したり、機体のクリーニングが不便になるなどの欠点があり、剥離防止の根本的な対策としてよりは、むしろ応急策と考えるのが正しいようである。
[落合一夫]