日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムルタテューリ」の意味・わかりやすい解説
ムルタテューリ
むるたてゅーり
Multatuli
(1820―1887)
オランダの小説家。本名エデュアルト・ダウエス・デッケル。1838年オランダ領東インド(現インドネシア)に渡り、地方官として過ごす。56年、上司との意見の食い違いからルバック州副理事官を辞し、ヨーロッパ各地を放浪。60年発表の『マックス・ハーフェラール』で一躍脚光を浴びる。ヨーロッパ文学の伝統にはまらない独自のスタイルで書き上げた自叙伝的小説で、情熱的にジャワ人を擁護し、またルバック州における事件の真相を明らかにし、オランダ植民地政策の卑劣さをついた19世紀オランダ文学の最高峰。植民地問題を小説の形式で扱った点に画期的意義がある。ほかに随想集『思いのままに』7巻(1862~77)がある。
[近藤紀子]