日本大百科全書(ニッポニカ) 「モン・スニ・トンネル」の意味・わかりやすい解説
モン・スニ・トンネル
もんすにとんねる
Tunnel de Mont Cenis
フランスとイタリアの国境であるフレジュス峠の下を貫きシャンベリ~トリノ間を結ぶ複線型鉄道トンネル。長さ1万3657メートル。アルプス山地を横断してつくられた最初の長大トンネルで、1857年に着工、1871年に開通した。トンネルの中間に国境線が走るが、トンネルの保守・管理はイタリア国鉄が担当する。イタリア側ではフレジュス・トンネルとよぶ。モン・スニ峠(標高2084メートル)はローマ時代からアルプス越えの重要なルートであり、1868年には道路に沿ってフェル式登山鉄道がつくられ、初めてアルプス山地を越えた鉄道となった。しかし、この最大90‰(パーミル)という急勾配(こうばい)の軽便鉄道は、国境地区の77キロメートルの区間の走破に6時間を要した。本格的な横断トンネルは伝統的なモン・スニ峠ルートを避け、その西方のフレジュス峠の下を貫くルートで設計されたが、フランス側のトンネル名にはモン・スニの名が残された。1980年、鉄道トンネルと並行する道路トンネルのフレジュス・トンネル(長さ1万2868メートル、車道幅員7メートル)が開通し、道路交通においてもモン・スニ峠越えの険路は解消された。
[青木栄一]