改訂新版 世界大百科事典 「ユセリンクス」の意味・わかりやすい解説
ユセリンクス
Willem Usselincx
生没年:1567-1647ころ
オランダで活動した,アントワープ出身の商人。1591年アムステルダムに赴く。熱心なカルバン主義者であった彼は,アメリカにオランダ人プロテスタントの理想の国を築くとともに,新大陸の富をスペインから奪いオランダ独立戦争(八十年戦争)を有利に進めようと考えた。その構想を実現に移そうと,1604年と18年に西インド会社特許状草案を発表したが,スペインに対して徹底抗戦を主張したために,その計画は休戦に傾いていた当時の政府のいれるところとはならなかった。21年に設立されたオランダ西インド会社は彼の意図するところとは異なり,私掠(しりやく)業のための会社であった。彼自身干拓事業への投資に失敗して破産し,23年にスウェーデンに渡る。国王グスタブ2世のもとで自分の年来の計画を実現させようとしたが,ここで設立された会社も彼の意図するものからはほど遠いものであった。
執筆者:佐藤 弘幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報