政府(読み)せいふ(英語表記)government

翻訳|government

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

政府
せいふ
government

広義には立法司法行政など一国の統治機構全体をさし,狭義には内閣およびそれに付属する行政機構のみをいう。古来どのような人間社会においても,権力組織体である政府的機構が存在し機能しているが,近代国家の出現はその画期的発達をもたらした。すなわちイギリス,フランス,アメリカなどにおいては,J.ロック,J.-J.ルソー,フェデラリストなどの主張を反映して,国民の意思を代表する議会を中心とする政治機構がつくられ,政府は立法機関をはじめとして必然的に司法,行政両機関をも包含すると広義に考えられた。今日,これらの諸国においては,政府は国家の存続や活動を維持するための動態的な国家権力の作用とみなされている。しかしながら,近代に入ってもなお皇帝の大権が広範な影響力をもっていたドイツにおいては,行政府の有する権限も強力であり,国法学上政府は狭義に解釈されてきた。日本においてもこれと同様であった。すなわち国家構造上,三権分立がみられなかった時代から表面的には立憲制になった明治憲法制定後にいたっても,政府は議会や政党との対比において考えられ,しかも天皇の大権を背景にした内閣や行政機関と同一視されてきたのである。この影響を受けて,一般に政府という語は日本では狭義に用いられている。

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知恵蔵の解説

政府

政府とは本来、立法、司法、行政の三権能を持った統治組織を意味する。しかし、日本の場合、政府は行政府として理解されがちである。こうした理解は、天皇主権のもとにあった明治国家の遺物であるといってよい。主権者である天皇の意思は、天皇の使用人である官吏の活動を通じて実現されるとみなされており、原理的には、帝国議会は天皇への協賛機関でしかなかった(実際にそうであったかどうかは別のことである)。したがって、こうした統治原理からは、政府とは天皇の官吏からなる行政府にほかならないとされた。

(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

政府【せいふ】

日本ではおもに行政を担当する機関(内閣および官僚機構)をさしていうが,英語のgovernmentは司法・立法機関をも含めた広い統治機構全体をさすのが通例。日本の近代政府は,旧来の太政官(だじょうかん)や参議の制度を廃した1885年の内閣制に始まる。
→関連項目議会

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世界大百科事典 第2版の解説

せいふ【政府 government】

広義には,国家の統治機構全体を意味し,立法・司法・行政の全部門を含む概念。イギリス,アメリカなどのgovernmentはこの意味で用いられることが多く,国家統治機構についてのみならず地方自治体についても地方政府local governmentとして転用されうる。狭義には,行政・執行部のみを指し,ドイツ語Regierungや日本語の政府においては,この意味合いが強い。 政治概念の広狭2義は,近代国民国家形成のあり方に由来するといえる。

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大辞林 第三版の解説

せいふ【政府】

政治を行う機関。現行憲法では、行政権の属する内閣または内閣とその下にある行政機関の総体をいう。広義では、立法・司法を含む国家の統治機関を意味する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

政府
せいふ
government

(1)広義では、国家の統治機構を総称し、立法、司法、行政のすべての機関を包含する。(2)狭義には、行政府(内閣および行政機構)を意味する。(3)最狭義においては、内閣、それもその時々の内閣をさす。英米仏などでは(1)の意味で用いられるが、日本では普通(2)(3)の意味で使われる。市民革命が貫徹された英米仏などの国々では、国民の代表機関たる議会を中心として統治機構がつくられてきたため、governmentの語は統治の三権を行うすべての機構をさすものとされてきた。これに対し日本では、政府ということばは立憲制の発達以前、三権の区別のなかった当時の統治機構をさすものとして使われ、立憲制の成立後も大権政治のもとで天皇の信任によって成立する内閣・行政官省を意味し、政府は国民の代表機関たる国会とは対抗関係にありこれを含まないものと考えられた。日本国憲法制定後も、その慣用で(2)(3)の意味で用いられている。20世紀に入って諸国に行政権優位の現象が現れ、今日では国家統治における内閣の重要性を反映して、英米においても政府が行政府を意味する用例が見受けられる。[小松 進]

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精選版 日本国語大辞典の解説

せい‐ふ【政府】

〘名〙
① 政治を行なうところ。内閣および内閣の下にあって行政をつかさどる機関。中央行政官庁。また、広義には国家の統治権を行使する機関。立法・司法・行政の各機関の総称の意としても用いられる。
※随筆・閑田次筆(1806)一「政府の司天台に蛮制のものを蔵めらるるといへども」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一「その国の政府にて、自由の権を専にし、人民を抑へ下す事を以て善しとする」 〔宗史‐欧陽脩伝〕
② 国庫のこと。
※競馬法(大正一二年)(1923)八条「勝馬投票券を発売したるときは〈略〉其の売得金の額の百分の一以内に相当する金額を政府に納付すべし」

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世界大百科事典内の政府の言及

【統治】より

…特定の少数者が権力を背景として集団に一定の秩序を付与しようとすること。政治とほぼ同義に用いられることが多いが,厳密に解すれば,統治は少数の治者と多数の被治者との分化を前提とし,治者が被治者を秩序づけることを意味するのに対して,政治は,少なくとも,対等者間の相互行為によって秩序が形成されることを理想としている。こうした差異を端的に示しているのは,政治と統治の言語としての差異であろう。すなわち,〈統治〉は〈統治する〉という他動詞の名詞形であるが,〈政治〉には同様の他動詞が対応していない。…

【行政裁判】より

…17世紀末ころ以来,絶対主義的な支配体制の確立を試みた君主は,その直属の官僚機構(コミッサリアートKommissariat)の権限拡大に努め,これらの官僚機構にその所管事項についての行政権と裁判権を与えてきた。しかし,それらの官僚機構の所管事項はしばしば伝来の司法裁判所(レギールングRegierung)の所管事項と競合し,そこに絶えざる権限争議が生じた。18世紀の半ばになると,一方では君主の官僚機構の整備も進み,それらの官僚機構による官府裁判Kammerjustizの制度も司法手続化されるようになった。…

※「政府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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