出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
スペイン領ネーデルラントが、国王に反乱を起こし、北部7州が独立するに至った戦争(1568~1648)。正式には八十年戦争とよばれる。ネーデルラント(低地地方)の大部分の領邦は14~15世紀の間にブルゴーニュ公家の統治下に入り、さらに1477年以降ハプスブルク家の所領になった。ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝カール5世は、ブリュッセルの政庁に執政と枢密会議、財務会議、国務会議を設け、諸州に総督を配して中央集権的統治を推進し、またネーデルラントに浸透しつつある新教ことにカルバン主義を厳しく禁止した。1555年、カールは息子フェリペ2世にネーデルラントの統治をゆだね、翌年スペイン王位を譲った。フェリペはネーデルラントの集権的統治をいっそう強化し、司教区制度を改革した。フェリペの統治に対してオラニエ公ウィレム1世、エフモント(エグモント)伯ら大貴族が反対運動を起こし、1566年には約400名の中・下級貴族が貴族同盟を結び、ブリュッセルの政庁に押しかけて、宗教裁判の廃止と全国議会の招集を求めた。カルバン主義者は勢いに乗じて野外説教集会を開いたが、バルト海貿易の途絶で経済的危機に陥った民衆の窮乏と宗教的情熱の赴くところ、ついに聖像破壊運動が勃発(ぼっぱつ)した。フェリペ2世は、暴動鎮圧のためアルバ公に1万の兵を率いさせてネーデルラントに派遣した。アルバは新教徒を激しく弾圧し、騒乱裁判会議を新設して恐怖政治体制を敷いた。カルバン主義者たちは海外に亡命し、貴族の指導下にゼー・ゴイセン(海乞食(こじき))と名のって団結し、反抗を続けた。
1568年ドイツに亡命中のオラニエ公は、弟ルードウィヒの率いる軍隊をネーデルラントに進攻させ、ここに八十年戦争が開始された。72年ゼー・ゴイセンはホラント、ゼーラント両州のほとんどの都市を占拠し、オラニエ公を両州の総督に推して反乱の指導をゆだねた。スペイン軍の猛反撃によりハールレムは奪回されたが、アルクマール、ライデンは英雄的な抵抗を続けてもちこたえた。76年オラニエ公の奔走で反乱側の2州とスペイン治下の諸州との間にヘントの平和(ゲントの和約ともいう)が成立し、ネーデルラントの平和と統一が実現した。79年北部の7州はユトレヒト同盟を結んで対スペイン戦争の継続を誓い、ここにネーデルラントは南北に分裂した。ユトレヒト同盟は81年フェリペ2世に対する臣従拒否宣言をし、フランス王アンリ3世の弟アンジュー公やイギリス女王エリザベス1世を主権者に迎えようとしたが失敗し、結局7州が各自、州主権と州議会をもち、軍事、外交など諸州共通の事項に関しては7州が構成する連邦議会を最高意思決定機関とする連邦共和国(1588~1795)が成立した。84年オラニエ公が暗殺されると、オルデンバルネフェルトがオラニエ公の遺児マウリッツを補佐し、同盟を指導してスペイン軍と戦い、1609年スペインと12年間の休戦条約を結び、実質的な独立を達成した。21年再開された対スペイン戦においてオランダは攻勢に転じ、スペイン治下の領土を占領して7州に付け加えた。1648年ウェストファリア条約が締結され、共和国は国際的にもその独立を承認された。
[栗原福也]
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ネーデルラントでスペイン・ハプスブルク家による集権化とカトリックの強制に反対して起こった戦争。オランダでは八十年戦争(1568~1648年)という。北部の大貴族の異議申し立てに下級貴族やプロテスタントの市民層が加わり,1568年に始まった。北部7州はユトレヒト同盟を結んで,81年独立を宣言。カトリックの多かった南部ネーデルラント(今日のベルギー)は脱落してスペイン領に留まった。1609年にスペインとの和平が実現して,実質的な独立を達成したが,正式承認は48年のウェストファリア条約を待たねばならなかった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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…スペインの絶対主義支配に対する属領ネーデルラントの反乱に始まり,その北部(オランダ共和国)の事実上の独立を経て,スペインによるその承認に至った事件(1568‐1648)の伝統的呼称。オランダ独立戦争ともいう。 スペイン国王フェリペ2世(在位1556‐98)の中央集権政策に対して身分的,地域的諸特権を擁護する貴族や都市の反抗,また厳酷なカトリック政策に対する新教徒や寛容派の反抗はすでに1560年前後に始まった。…
※「オランダ独立戦争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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