改訂新版 世界大百科事典 「ユニタリ表現」の意味・わかりやすい解説
ユニタリ表現 (ユニタリひょうげん)
unitary representation
群Gの各元gにあるヒルベルト空間H(≠{0})上のユニタリ作用素Ugが対応し,積を保つ(すなわちUgh=UgUhである)とき,写像UをGのユニタリ表現という。Gが位相群のときはUは連続であることを条件とする。Hの閉部分空間で各Ugで不変なものがHと{0}だけであるとき,Uは既約であるという。Utx=eixt(x,t∈R)とすれば,t→Utxで定義される写像Uxは実数の加法群Rの既約ユニタリ表現である。R上の関数を調和振動eixtの重ね合せによって表すことが調和解析の目標であるが,ユニタリ表現論は,Rの代りに群Gにおいて同様のことを考えようとするものである。このとき既約ユニタリ表現が調和振動に対応する。したがって,Gの既約ユニタリ表現をすべて求めることおよびG上の関数をそれらによって展開することが主要な目標となる。この理論はC.H.H.ワイルによって有限次元の場合に始められ,のち量子力学との関連で無限次元の場合が研究されるようになり,今日では数学の重要な一分野となった。
執筆者:杉浦 光夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報