日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ラトナーカラシャーンティ
らとなーからしゃーんてぃ
Ratnākaraśānti
生没年不詳。11世紀、インドのビクラマシラー僧院にいた仏教の大学僧。アティーシャの師の一人で、チベットではシャーンティパとよばれた。密教学者としても名高いが、また唯識(ゆいしき)思想家および論理学者としても優れていた。『般若波羅蜜多論(はんにゃはらみったろん)』『八千頌般若細疏最上心髄(はっせんじゅはんにゃさいそさいじょうしんずい)』などで無相(むそう)唯識の理論を展開し、有相(うそう)唯識家ジュニャーナシュリーミトラJñānaśrīmitra(980―1030ころ)と論争した。彼は中観(ちゅうがん)と唯識の双修を主張している。また『内遍充論(ないへんじゅうろん)』(アンタルビヤープティサマルタナAntarvyāptisamarthana)を著し、法称(ほっしょう)(ダルマキールティ)の論理学を継いで内遍充の理論を完成した。
[梶山雄一 2016年12月12日]