日本大百科全書(ニッポニカ) 「リュミニズム」の意味・わかりやすい解説
リュミニズム
りゅみにずむ
luminism
絵画手法の一つ。19世紀中ごろのアメリカで風景描写に使われた手法で、映光主義などと訳されるが、特定の美術運動ではない。リュミニズムによる作品は、多くの場合、画面の半分以上を空が占め、それに呼応するように水面が広がる光景になっている。大空と水面が互いに映発し、大気が透明に深まる無限感と精細な描写、微妙な空間表現が重視され、筆触を消去した鏡のような画面が特徴である。レインFitz H. Lane、ヒードMartin J. Headeらの風景画家がその典型的な作品を数多く描いたほか、ハドソン・リバー派の第二世代といわれるチャーチFrederick E. Church、ケンゼットJohn Kensett、ギフォードSanford R. Giffordや風俗画のビンガムGeorge C. Bingham、マウントWilliam S. Mountなどもこの手法を使っている。1870年代になるとリュミニズムは自然消滅し、かわってホーマー、エイキンズにみられるリアリズムとフランス印象派系の風景画が登場する。なお、リュミニズムの用語は1954年J・バウアーJohn Baurによって初めて使われた。
[桑原住雄]