日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホーマー」の意味・わかりやすい解説
ホーマー(Winslow Homer)
ほーまー
Winslow Homer
(1836―1910)
アメリカ19世紀後半の写実画家。ボストンに生まれる。初めリトグラフの徒弟修業をしたのち、『ハーパーズ・ウィークリー』などの週刊誌に木版画のイラストを寄稿していたが、南北戦争のころから油彩に転向し、1862年北軍に従軍して優れた作品を残した。67年のパリ万国博覧会に『前線からの捕虜』(1866)を出品。70年代に入ると明るい色と暖かい目で少年や少女などを描いたほか、水彩も楽しむようになった。北海に臨むイギリス北東部のタインマスで2年にわたる孤独の毎日を過ごした80年代前期から、大自然の力と人間の対比に焦点を置くようになり、83年帰国後もメーン州のプラウツネックに引きこもって海を主題にした秀作を数多く描いている。夏はアディロンダック、冬にはカリブ海で水彩を描くという生活が続き、晩年には大自然そのものと和解調和していった。ターナーやラファエル前派の影響はみられるが、フランス印象派とは直接つながらないとみられている。
[桑原住雄]
『J・フレックスナー著、桑原住雄監修『ホーマー』(1977・タイムライフブックス)』