化学辞典 第2版 「リン酸ジルコニウム」の解説
リン酸ジルコニウム
リンサンジルコニウム
zirconium phosphate
オルトリン酸ジルコニウムZrⅣ3(PO4)4はアルミニウム缶を六フッ化ジルコニウム酸H2ZrF6-リン酸混合溶液で処理すると得られる皮膜の成分で,アルミ飲料缶の非クロム系皮膜として実用化されている.リン酸ジルコニウムと通常よばれているものは,ビス(リン酸水素)ジルコニウム(Ⅳ)(zirconium(Ⅳ) bis(hydrogenphosphate))ZrⅣ(HPO4)2(283.18)であることが多い.略称ZrP,ZPが使われる.Zr原子がHPO42-層の間にはさまれた構造をもつ素材で,1950年代に陽イオン交換特性が見いだされて以来,イオン交換樹脂より耐放射線性や耐熱性,さらに耐溶剤性および選択性などがすぐれている無機イオン交換体として注目を集めるようになった.ジルコニウム化合物にリン酸塩を加えると得られる.無色の固体で,構造的には,非晶質のビス(リン酸水素)ジルコニウム(Ⅳ)n水和物Zr(HPO4)2・nH2O,二次元層状のα-ビス(リン酸水素)ジルコニウム(Ⅳ)一水和物α-Zr(HPO4)2・H2O(略称α-ZrP),およびγ-リン酸二水素リン酸ジルコニウム(Ⅳ)二水和物γ-Zr(PO4)(H2PO4)・2H2O(略称γ-ZrP),三次元網目状構造のリン酸二ジルコニウム(Ⅳ)水素HZr2(PO4)3が知られている.いずれも水に難溶で,イオン交換性がある.ほかに,二リン酸ジルコニウム(Ⅳ)ZrP2O7,二リン酸ビス(オキソジルコニウム(Ⅳ))(ZrO)2P2O7などが知られている.その応用は,銀など抗菌性金属を担持させた抗菌剤,層間化合物材料,吸着材,イオン交換体,ガスセンサー,放射性元素など各種金属の固定化材,水素をRu,Ni,Moなど遷移元素陽イオンで置換したものは有機合成用触媒ほか多分野にわたっている.[CAS 13765-95-2:zirconium phosphate][CAS 15438-04-7:Zr3(PO4)4][CAS 13772-29-7:Zr(HPO4)2][CAS 13933-56-7:α-Zr(HPO4)2・H2O][CAS 13772-31-1:γ-Zr(PO4)(H2PO4)・2H2O][CAS 106060-53-1:HZr2(PO4)3][CAS 33712-62-8:ZrP2O7][CAS 12769-93-6:(ZrO)2P2O7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報