改訂新版 世界大百科事典 「レンズ空間」の意味・わかりやすい解説
レンズ空間 (レンズくうかん)
lens space
Vを三次元球体,Sをその表面である二次元球面とし,大円Cで分かれるSの二つの半球面をE,E′とする。p,q(p>0)を互いに素な整数として,Eの点xに対し,その点をCの軸のまわりに2πq/pだけ回転した点をつくり,さらにこの点のCの面に関する対称点をつくる。このとき得られるE′の点をφ(x)で表す。いま,Vにおいて,すべてのxについて,xとφ(x)をはり合わせた図形を考え,これをL(p,q)で表し,(p,q)型のレンズ空間という。これは次のようにも作れる。z1=x1+iy1,z2=x2+iy2を複素数とするとき,|z1|2+|z2|2=1はx12+y12+x22+y22=1と同値だから,|z1|2+|z2|2=1をみたす複素数の組(z1,z2)の全体は三次元球面S3を表す。このときに,同相写像h:S3→S3がで定義でき,gp=g◦……◦g(p個)は恒等写像となる。いま,S3において,すべての点x∈S3についてx,g(x),……,gp⁻1(x)を同一視したものがL(p,q)となる。L(p,q)は三次元の閉じた多様体で,とくにL(2,1)は三次元射影空間である。レンズ空間は興味ある多くの性質をもっている。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報