( 1 )漢籍に典拠を持ち、日本では古く①の挙例のような、上層階級の男性日記に使用例が見られる。しかし、「興味」が一般的に用いられるようになったのは、明治時代以降と思われる。
( 2 )②の挙例「哲学字彙」に見られるように、英語 interest の訳語として採用された。明治中期には「趣味」も類義に使用されたが、次第に、「興味」は英語 interest の意味に、また「趣味」は英語 taste の意味に対応するようになった。
ある対象(事物や活動など)についての積極的な選択の構えを関心といい、それに好きという情動的な心的状態が加わったものを興味とよんでいる。ドイツの心理学者のレビンは、人間がある対象に接近したり、あるいはそれを回避したりする場合、誘意性という概念で説明している。のどが渇いた人(正確にいえば体内の水分が必要になった人)にとっては水分はプラスの誘意性(積極的誘意性)をもつことになり、人は水分に向かって接近行動を展開する。また、犬にかまれたことのある子供は犬に対してマイナスの誘意性(消極的誘意性)をもつので回避行動を展開する。この誘意性の考え方からすれば、興味は、特定の個人と、その個人が積極的な情動状態を伴って選択した対象との間の引き合いであるといえる。興味のことを英語でインタレストinterestというが、interは間の意味、estは存在という意味、つまり、人と事象の間にあるものということになる。
ドイツの哲学者、心理学者のシュプランガーは、興味の型(生活様式の型)によって人間を分類している。心理学でも有名な性格類型である。すなわち、(1)理論人(真理の追求に興味をもつ人、学究肌の人)、(2)経済人(財貨の蓄積に興味をもつ人、金権家肌の人)、(3)審美人(美的な事象に興味をもつ人、芸術家肌の人)、(4)権力人(政治的な仕事に興味をもつ人、政治家肌の人)、(5)宗教人(神仏への信仰に興味をもつ人、宗教家肌の人)、(6)社会人(社会的福祉活動に興味をもつ人、福祉家肌の人)の6類型である。このほか(7)として、運動人(スポーツ活動に興味をもつ人、運動家肌の人)を追加する学者もいる。シュプランガーは1人の人間が複数の型に入ることもありうるといっている。すなわち、経済人と権力人、宗教人と社会人というふうに組み合わされることもあるというのである。
個人の興味を調べる心理検査を興味検査というが、そのなかでも職業興味検査は有名である。興味があることに加えて能力的な適性も必要になる。心理的な興味と能力的な適性は車の両輪であって、このバランスがうまくとれていないと満足できる職業生活は遂行できない。
[大村政男]
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