クローンという言葉は、古代ギリシア語で「小枝」を意味します。植物では、小枝を使った挿し木によって、同じ遺伝子をもった個体が古くからつくられてきています。このことが、「クローン」あるいは「クローニング」という言葉の元になったと考えられます。
生物学の分野では「同じ遺伝情報をもつもの」という意味で、遺伝子、細胞、個体などに使われます。ですから、クローン動物とは同じ遺伝情報をもつ動物たちのことをいいます。
クローン動物は、作製の仕方によって「受精卵クローン」と「体細胞クローン」とに分けられます。
受精卵クローンは、受精した卵が細胞分裂(
胚分割クローンというのは、未分化の胚を複数に分割したもので、人為的に一卵性多子をつくることです。核移植クローンというのは、未受精卵の核を別の細胞の核と入れ替えたものをいいます。初期胚の核移植クローンは、1980年代にマウス、ヒツジ、ウシなどで成功していました。
一方、体細胞クローンとは、成体の体細胞(皮膚や筋肉など)を用いた核移植クローンのことをいいます。1996年に、初めてヒツジのドリーが誕生し、その後、マウスやウシなどでも体細胞クローンが成功しました。
クローン動物というと、現在では体細胞クローンのことをいうようになりました。なぜなら、受精卵クローンの場合、これからつくられる動物の性質をあらかじめ知ることはできませんが、体細胞クローンの場合は、実在する性質のわかっている個体や、すでに死亡した個体でも生前に凍結保存された細胞さえあれば、理論上は同じ遺伝子をもった個体を大量につくることができることになるからです。
ヒツジのドリーは、すでに死亡していたヒツジの乳腺上皮細胞の核移植によってつくられました。生物学上、この実験は、すでに分化した細胞の核でも、個体をつくる全能性があるということを哺乳類で初めて示した例となりました。
同時に、クローン人間の誕生が現実視されることとなり、一般の人の注目を浴びることになりました。ただし現在のところ、クローン技術は世界的に、ヒトへの応用は禁じられています。
クローン技術は、有用動物の大量生産や、絶滅の危機に
私たちの体を構成する細胞は、免疫系の一部の細胞を除いて同じ遺伝情報をもっています。しかし、分化した細胞は、DNAのメチル化の状態やクロマチン構造などの塩基配列の変化を伴わない変化が起こっており、全能性を発揮するには、未分化と同じ状態への初期化が完全に行われることが重要だということがわかり始めてきています。
応用面ばかりが注目されるクローン技術ですが、細胞分化とはどういうことなのかというような、生物学的に重要な問題の解決の糸口となることは間違いないと思われます。
中野 芳朗
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
(川口啓明 科学ジャーナリスト / 菊地昌子 科学ジャーナリスト / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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