日本大百科全書(ニッポニカ) 「シドンズ夫人」の意味・わかりやすい解説
シドンズ夫人
しどんずふじん
Sarah Siddons
(1755―1831)
イギリスの女優。有名な俳優一族ケンブル家の一員で、弟に名優ジョン・フィリップ・ケンブルがいる。18歳でウィリアム・シドンズと結婚。早くから舞台に立ち、20歳ごろ一度ロンドンの劇場に出たが失敗、しかし7年後に再登場し、たちまち悲劇女優の第一人者の地位を獲得した。毅然(きぜん)たる動作、朗々たる声音で、批評家のW・ハズリットから「悲劇の権化」と称せられた。T・サザーンの『宿命的な結婚』やT・オトウェーの『救われたベニス』の女主人公、とくにマクベス夫人を得意とし、1812年の引退興行でもマクベス夫人の役をつとめた。
[中野里皓史]