改訂新版 世界大百科事典 「チセ」の意味・わかりやすい解説
チセ
chise
アイヌの伝統的な住居。北海道アイヌのごく普通のチセは3間×4間,あるいは2間×3間の1室作りで,入口が風や雪に直接さらされるのを防ぐために,小さな土間の前室セムsemを設ける。屋根,壁とも茅(かや)で葺く。内部の中央やや入口寄りに炉を切り,火棚をつり,入口のすぐ左側に主人夫婦の寝台を設ける。右側には家族の寝台がある。部屋の奥の正面には神窓(カムイプヤル。ロルンプヤルともいう)を開き,窓の外に神祭のときの祭壇がある。柱は丸木で掘立てとし,柱上に桁をのせ,梁を配る。この上に3本の木で構成されケトゥンニketun-niと呼ばれる1対の杈首(さす)を並べ,小屋組みをつくる。樺太アイヌのチセはエゾマツなど樹皮葺きの夏の家サハチセ(4月~11月に使う)と,竪穴の冬の家トイチセ(〈土の家〉の意。11月~4月に使う)から構成される。トイチセはサハチセに対して仮小屋とされる。柱が丸木で掘立てであることは北海道アイヌのチセと同様であるが,小屋は杈首でなく束(つか)を用いる。
執筆者:宮沢 智士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報