改訂新版 世界大百科事典 「ツユノイト」の意味・わかりやすい解説
ツユノイト
Derbesia
多核管状の海産緑藻の1属で,分枝が不規則または叉(さ)状であること,生殖器官が側生することで,似た緑藻のハネモ属Bryopsisやマユハキモ属Chlorodesmusなどと区別される。日本にはホソツユノイトD.marina(Lyngbye)Solier,ツユノイトケバD.tenuissima(Moris et De Notaris)Crouan,ツユノイトD.lamourouxii(J.Ag.)Solier,ヒメツユノイトD.ryukyuensis Yam.et Tanakaなど6種の生育が知られ,北方系のホソツユノイト以外は暖海域に分布する。低潮線付近から漸深帯の岩上に生育する。生活史は特徴的で,生殖器官から泳ぎ出た多数の鞭毛を冠状にもつ遊走子は,発芽すると多核囊状の緑藻に生育する。これはかつてウミノタマHalicystisと呼ばれていたが,実は有性世代の体で,ここにつくられた雌雄の配偶子の接合子がツユノイトに生育する。最近,遊走子がウミノタマにならないで,炭酸カルシウムを蓄積する盤状に発達する生活史が見つかり,新属Pedobesiaが設立された。ヒメツユノイトとツユノイトはこの生活史をもつことがわかり,新属に移された。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報