日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トリトン(ギリシア神話)
とりとん
Triton
ギリシア神話の海の神。ポセイドンとアンフィトリテの子で、下半身は魚形(または蛇形)で、上半身は人の姿をとる。普通、海底の宮殿に住むとされるが、ボイオティア近辺の河川がもともとの故地であるという。海が穏やかなときには、海面に浮かび上がってほら貝を吹き鳴らす。伝説では端役でしか登場しないが、その本来の神格はかなり古く、トリトンという名は水と深い関連をもつと考えられている。早くからポセイドンの配下に属しているが、時代が下るにつれ、アフロディテやネレイスたちにまつわりついて忠勤に励むトリトンの一家が現れ、その名も複数形トリトネスTritonesになる。またヘレニズム時代以降は、トリトンはアフリカのリビアにあるトリトニス湖に住むと考えられた。彼の姿は古くから壺絵(つぼえ)やレリーフに好んで取り上げられている。
[伊藤照夫]