日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノエシス・ノエマ」の意味・わかりやすい解説
ノエシス・ノエマ
のえしすのえま
noesis noema ギリシア語
ドイツの哲学者フッサールの現象学用語。フッサールによれば、意識の本質は「指向性」、つまり「――の意識」であることにあるが、その指向の仕組みは、ギリシア語で思考作用をさす「ノエシス」と、思考されたもの(対象)をさす「ノエマ」の両概念によって説明される。指向とは、意識が実的(レーエル)な作用としての自己自身を越え、対象的なものにかかわる超越の働きであるが、その際の対象が、思考されたものそれ自体としてのノエマ的―意味的な対象である。
フッサールによれば、庭の樹木を意識している場合の「樹木の意識」における引用符内部の「樹木」は、たとえば燃やしてしまえばなくなる実在物としての対象ではなく、イデエルな「意味」的対象=ノエマとしての「樹木」である。「樹木の意識」という現象自身、燃えればなくなるような実在物ではない以上、その意識が指向的にかかわる対象も物的対象ではなく、ノエマ的対象である。
[山崎庸佑]