改訂新版 世界大百科事典 「ヘイムスクリングラ」の意味・わかりやすい解説
ヘイムスクリングラ
Heimskringla
スノッリ・ストゥルルソン作のサガ。1230年ころの作。最古の伝説時代から1177年にいたるノルウェー王朝史を扱う。〈ヘイムスクリングラ〉は〈世界の環〉の意で,写本の冒頭の語から採られている。一大長編で,ヨーロッパ中世にあって自国語で書かれた歴史記録として質量ともに最もすぐれたものの一つであろう。内容は,(1)異教時代の北ゲルマン人の信仰,生活,文化,(2)キリスト教改宗期の変化,(3)改宗後の歩み,という北欧・スカンジナビア史の3段階が詳細に叙述され,北欧の激動期を知るうえでの興味の尽きない資料といえる。スノッリはスチュルミルの《聖オーラブ》,アリ・ソルギルスソンの《アイスランド人の書》などのサガ作品,シグファト,ショーゾールブらのスカルド詩,それに口承伝承や現存の人物の話を基にして,これまでの奇跡譚を脱してできる限り客観的に歴史と人物を活写することに努めている。
執筆者:谷口 幸男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報