知恵蔵 「モンスターハンター」の解説
モンスターハンター
プレーヤーは、町や村の住民から「クエスト」と言われる要請を受けて、野原や海、山、密林などで飛竜などの巨大なモンスターをハンティングする。ゲームそのもののクリア条件は特になく、使用キャラクターのレベルアップもない。様々な武器やアイテム、罠などを駆使し、モンスターの行動パターンなどを予測して、知識と経験で狩っていく。また、倒したモンスターから得た材料で武器や防具をつくることができるので、それによってアイテムをパワーアップさせていくことができる。シリーズが進むにつれ、鉱石の発掘や釣り、作物の栽培やペットの飼育などの要素も増えていった。
オフラインでは1人または2人プレーだが、オンラインだと最大4人まで同時にプレーできる。発売当初はあまり人気が出なかったものの、完成度の高いグラフィックや独創的な世界観、オンラインゲームに慣れていない人でも気軽に楽しめる内容が口コミで広がり、人気を博した。それまでにも通信機能を使ったオンラインゲームは存在したが、プレーヤー同士で勝敗を競うものがほとんどであったのに対し、「モンスターハンター」ではモンスターを倒すために友人や他人と協力しながらプレーできる。ゲーム初心者でも熟練者の手助けでモンスターを狩れること、仲間と一緒に遊ぶ一体感があることなども魅力となった。08年発売の「モンスターハンターポータブル 2nd G」から登場した、冒険を手助けするキャラクターである「アイルー」も、そのデザインや動きの愛らしさで人気が高い。11年1月現在までに、プレイステーション用ソフトが3本、Wii用ソフトが2本、PSP専用ソフトが5本、Windows用ゲームが1本、Xbox 360版が1本、携帯用アプリが2本発売されている。ほとんどのソフトは流血表現があるためCERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)の15歳以上の指定を受けている。04年9月には北米でも「モンスターハンター」が発売され、海外進出を果たしている。
国内ゲームソフト市場では、100万本を超えれば大ヒットと言われるが、同シリーズはそのほとんどがミリオンセラーとなっており、10年12月31日時点で、PSP専用ソフトでは「モンスターハンター ポータブル」(05年12月発売)が120万本、「モンスターハンターポータブル 2nd」(07年2月発売)が230万本、「モンスターハンターポータブル 2nd G」(08年3月発売)が320万本、「モンスターハンターポータブル 3rd」(10年12月)が410万本、Wii用ソフトでは「モンスターハンター3 (トライ)」(09年8月発売)が180万本を売り上げている。
「モンスターハンターポータブル2nd」は、発売1カ月で累計出荷本数100万本を達成。このとき、「モンスターハンター ポータブル」も廉価版と合わせ国内市場で100万本を突破する見通しになり、国内におけるPSP専用ソフト累計出荷数No.1タイトルとなった。また、「モンスターハンターポータブル2nd G」は、発売6日目で100万本を突破するミリオンセールスを達成。10年3月には、国内で400万本の出荷を記録した。10年12月1日に発売した最新作「モンスターハンターポータブル3rd」は5日間で214万6千本を販売。PSP用ソフトの発売1週目の本数として過去最多となった。作品の人気はゲーム機本体の売り上げにも影響を与え、PSP は08年1月~6月の国内家庭用ゲーム機の売り上げの中で初めて販売台数がトップになった。また、「モンスターハンター」最新作発売時期の10年11月29日から12月5日までの1週間でPSPの販売台数は32万6千台。これも04年12月の発売以来、1週間の販売台数で過去最多の記録となった。Wii用ソフトでも、売り上げは好調。カプコンは「モンスターハンター3」を、国内で初回100万本出荷することを発売前の7月の時点で確定。サードパーティーのWii向けタイトルとしては、国内で初のミリオンセールスとなった。
04年の第1作発売以来、国内外でのシリーズ売り上げ累計は、11年1月時点で1700万本を突破し、カプコンの営業利益に大きな影響を与えている。カプコンが11年2月2日に発表した10年4-12月の営業利益は、前年同期の2.5倍となる127億円となった。「モンスターハンターポータブル3rd」の人気が年末商戦を牽引したと見られている。
口コミで広がった人気だが、人気を盛り上げる仕掛けの中心となったのはカプコンのプロデューサーの辻本良三氏、ディレクターの藤岡要氏、ディレクターの一瀬泰範氏、プランナーの小嶋慎太郎氏。第1作目、2作目とも、販売本数は約30万本程度で、爆発的なヒットには至らなかった。そこでカプコンでは複数で遊ぶ楽しさをアピールするため、ユーザーが集まるコミュニティの場を提案。07年に名古屋、福岡など全国5カ所で「モンハンフェスタ」を実施し、延べ1万5千人以上が来場した。08年にはユーザーが習熟度を高められる「モンハン夏期講習」を実施。これらのイベントが功を奏し、ユーザーは協力プレーの楽しさを実感。友人や知人をゲームに誘うこととなった。また、協力プレーを強調したウェブプロモーションとも相乗効果を生み、それまでファン層の中心だった中高生だけでなく、小学生や社会人などの新たな層も開拓。「モンスターハンターポータブル2nd」、「モンスターハンターポータブル2ndG」へのブレークへとつながった。
作品を元にした小説や漫画、グッズの発売、雑誌や企業とのコラボレーションイベントなども多数。受賞数も多く、「モンスターハンター」が「第7回 CESA GAME AWARDS」で「Future賞」、「第8回 CESA GAME AWARDS」で「最優秀賞」受賞。「モンスターハンター ポータブル」が「ファミ通 AWARDS 2005」で「優秀賞(ポータブル賞)」、「日本ゲーム大賞2006」で「特別賞」受賞。「モンスターハンター 2(ドス)」が「第9回 CESA GAME AWARDS」で「Future賞」、「日本ゲーム大賞2006」で「優秀賞」受賞。「モンスターハンターポータブル 2nd」が「日本ゲーム大賞2006」で「Future賞」、「東京ゲームショウ2007」で「日本ゲーム大賞」受賞。さらに07年12月「文化庁メディア芸術祭」で「エンターテインメント部門」にて優秀賞を受賞。09年09月「モンスターハンターポータブル」の開発チームがCEDEC AWARDSにて「最優秀賞」を受賞。同年「モンスターハンターポータブル 2nd G PSP the Best」が「東京ゲームショウ2009」の「日本ゲーム大賞2009」において「特別賞」を受賞、「モンスターハンター」の開発チーム自体も「経済産業大臣賞」を受賞した。
(富岡亜紀子 ライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報