ルコック探偵(読み)るこっくたんてい(その他表記)Monsieur Lecoq

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルコック探偵」の意味・わかりやすい解説

ルコック探偵
るこっくたんてい
Monsieur Lecoq

フランスの推理作家E・ガボリオの長編。1869年作。初めて警官探偵を創作した記念すべき作品である。警備隊が巡視中、居酒屋から叫び声があがり、3人の男が殺され、ピストルを持った男が逮捕された。若い警官探偵ルコックは、辻(つじ)馬車で逃げる2人の女を追うが見失う。逮捕された男も、捜査線上に浮かぶ関係者も、いずれも口をつぐんでしゃべらない。ルコックは一計を案じて容疑者の男を釈放し、彼を尾行するのだが、まんまと逃げられてしまう。ルコックのじみな、執拗(しつよう)な証拠集めと推理が続けられていく。

 ルコックは、本編のほかに『ルルージュ事件』(1866)、『書類百十三』(1867)、『オルシバルの犯罪』(1867)、『パリの奴隷』(1867)、『首の綱』(1873)、『他人の銭』(1873)、中編『バティニョールの小男』(1876)などでも活躍し、イギリスの推理作家クロフツが創造したフレンチ警部の先駆者的な存在。これらの作品は近年の警察小説の始祖ともいえる。

[梶 龍雄]

『松村喜雄訳『ルコック探偵』(旺文社文庫)』

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