並て(読み)なべて

精選版 日本国語大辞典 「並て」の意味・読み・例文・類語

なべ‐て【並て】

〘副〙 (動詞「なぶ(並)」の連用形に、助詞「て」の付いてできたもの。「なべての」の形で、連体修飾語として用いることも多い)
① 同じ状態が広くいきわたるさまを表わす。おしなべて。一面に。一帯に。
古今(905‐914)恋五・八二一「秋風ふきとふきぬるむさしのはなべてくさばの色かはりけり〈よみ人しらず〉」
事柄が同じ程度・状態であるさまを表わす。すべて。総じて。一般に。概して。
※古今(905‐914)東歌・一〇九六「つくばねの峯のもみぢばおちつもりしるもしらぬもなべてかなしも〈ひたちうた〉」
仮名草子・身の鏡(1659)中「なべて人内用の時客来あれば、無挨拶の顔付をし」
③ 事柄の程度や状態が、格別なことなく並一通りであるさまを表わす。なみ。尋常。後に、否定表現・反語表現を伴うことが多い。→なべてならず
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「帝〈略〉なべての人の使は、明けたてば、立ち並みたれど出で入りもせず」
※宇治拾遺(1221頃)一二「なべての人ほどなる男とみる程に、おびたたしく大になりて、この男を唯一口に食ひてけり」

なめ‐て【並て】

山家集(12C後)上「ふく風のなめて梢にあたるかなかばかり人の惜しむ桜に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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