国指定史跡ガイド 「久留倍官衙遺跡」の解説
くるべかんがいせき【久留倍官衙遺跡】
三重県四日市市大矢知町にある官衙跡。市内北部、伊勢湾を望む標高30mほどの丘陵に位置し、2001年(平成13)からの発掘調査で多数の掘立柱建物が確認された、奈良時代の官衙遺跡。丘陵の上部に東向きに造られた建物群は、東西42m、南北51mの塀で囲われた政庁跡で、正殿、脇殿、八脚門などが配置され、外側には楼閣を備えていた。そして、その後、東斜面には東西約66m、南北約99mの区画溝がめぐり、その中に倉庫である正倉群が造られていた。久留倍官衙遺跡は、官衙の政庁や正倉などが時期ごとに場所を変えて展開するもので、伊勢国の朝明郡衙(あさけぐんが)跡である可能性が高い。壬申の乱の際に、大海人皇子(おおあまのおうじ)(のちの天武天皇)が朝明郡に立ち寄ったことが知られ、その関係も注目される。古代国家の地方支配体制を具体的に示すものとしてきわめて重要なことから、2006年(平成18)に国の史跡に指定された。近鉄名古屋線四日市駅から徒歩約5分。