地形の高度および起伏(起伏については〈地形〉の項目参照)が山地より小さく,台地よりは大きい地形。ふつうは多摩丘陵,千里山丘陵のように稜線が幾重にも重なり,丘陵地としてまとまって広がる。稜線高度は標高300m以下で,稜線と隣接する谷底との高度差(起伏量)は100m以下,細密な谷に刻まれ肢節が細かい。稜線は瘦せているが定高性を保つので,遠くから望むと平たんな感じを与える。地質は新第三系中新統・鮮新統の砂岩,ケツ岩などの緩斜層である場合が多く,一部に旧期更新統の砂礫層,火山砕屑岩が載る。武蔵野台地の浅間山(せんげんやま)や狭山丘陵のように洪積台地に取り囲まれたり,平野に接して山麓に位置する丘陵は,平野の一部として取り扱う方が便利である。大都市圏の内部にある丘陵地は,長い間農林地として保たれてきたが,ニュータウンや大規模住宅団地の開発は,これらの丘陵地を対象としたものが多い。多摩ニュータウン(東京),高蔵寺ニュータウン(名古屋),香里団地(大阪)などがその例である。比較的起伏が小さく地層が軟弱なため地形改変をしやすいことが,低地や台地に次いで都市的開発の対象となる原因の一つである。
房総半島,能登半島,知多半島はそれぞれ丘陵地が主体を占めている半島である。丘陵を開析するおもな谷は勾配が緩く谷奥まで深く入りこめるので,古くから人の住みつきやすい環境であった。その反面地形の襞(ひだ)が細かく自然のままでは大集落は発達しにくかったので,自給自足的傾向の強い小集落が散在してきた。孤立しやすく開発から取り残されがちな場所でもある。丘陵地から成る半島は,こうした性格が顕著であり,古くから棚田(房総丘陵など)が開けたり,林業地(能登丘陵のアテ林)などとなってきた。薪炭林などとしての用途のなくなった丘陵斜面は,最近ゴルフ場や牧草地,レジャー用地,大学の敷地など広い面積の必要な土地利用に開発されつつある。アメリカの地理学者トレワーサによれば起伏量150~600mの土地を丘陵地と定義しているが,この数値は日本の地形では丹沢山地,六甲山地のような起伏地にあてはめることになり,そぐわない。インドの場合ヒマラヤ前地のシワリク丘陵は標高1200m,南インドのニルギリ丘陵は標高1500~2000mあり,ヒマラヤ山脈の高さに比して丘陵地として扱われている。こうした例から丘陵地は地域内の起伏による相対的概念ともいえる。
執筆者:式 正英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
同地域の山地よりは低く平地よりは高くて、開析が進んで壮年期状態にある小起伏の陸地の部分。山地と丘陵を1000フィート(約300メートル)の高度で区別する人もあるが、アメリカのサウス・ダコタ州のブラック丘陵や、インドのニルギリ丘陵には、2000メートルを超える峰があり、高度によって丘陵を明確に定義することはできない。
新生代第三紀以前の岩石からなる丘陵には、頂部が丸みをもつ多数の小丘の集合となっていても、頂高がよくそろっていて、遠望すると平坦(へいたん)な背面をなすものが多い。これらの丘陵は、第三紀末ないし更新世(洪積世)前期には、台地、準平原、山麓(さんろく)面などの侵食面をなしていたことが推察される。
日本の平野や盆地の周辺には、鮮新洪積層や下部洪積層からなる、海成、湖成、河成の段丘や扇状地などの開析された丘陵が多く、それらは平らな谷床をもつ谷で細かく開析されているが、並列ないし分岐する脊梁(せきりょう)は比較的平らで凹凸せず、侵食面や堆積(たいせき)面である原面の一部を残存することも多い。
ヨーロッパには、古生代や中生代の古い岩石からなる丘陵が多い。ロシアではモスクワ西方のバルダイ丘陵、同じく南方の中央ロシア丘陵、ボルガ川右岸のボルガ丘陵、ウクライナ東部のドネツ丘陵、同じく南西部のボルノポドル丘陵などが知られ、またチェコのボヘミア東部のモラビア丘陵、イギリスのチェビオット丘陵、クリーブランド丘陵が著名である。日本では、北海道や中国地方の丘陵に、古生代や中生代の古い岩石からなるものがあるが、新第三紀層からなるものとしては馬追(うまおい)丘陵(北海道)、笹森(ささもり)丘陵(秋田県)、房総丘陵(千葉県)、魚沼(うおぬま)丘陵(新潟県)、東頸城(くびき)丘陵(新潟県)、宝達(ほうだつ)丘陵(石川県)などが知られ、また、鮮新洪積層や下部洪積層からなるものとしては多摩丘陵(関東南部)、狭山(さやま)丘陵(関東南西部)、大磯(おおいそ)丘陵(神奈川県)、水口(みなくち)丘陵(滋賀県)、堅田(かたた)丘陵(滋賀県)、千里(せんり)丘陵(大阪府)、枚方(ひらかた)丘陵(大阪府)などが代表的丘陵である。
これらの丘陵の丘頂付近は山林、丘腹や丘麓は耕地、谷底は水田に利用されている所が多い。近年、都市付近の丘陵は大規模な宅地や団地の造成、ゴルフ場、遊園地、大学などの建設で開発が著しく、河川の氾濫(はんらん)や地すべりなどの災害が発生して、自然保護が問題になっている。
[壽圓晋吾]
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