二重収束質量分析計(読み)ニジュウシュウソクシツリョウブンセキケイ

化学辞典 第2版 「二重収束質量分析計」の解説

二重収束質量分析計
ニジュウシュウソクシツリョウブンセキケイ
double-focusing mass spectrometer

質量分析計において,均一磁場はイオンの質量分散と方向収束を行うが,イオンの初速度にもとづく色収差(chromatic aberration)に対しては無力であり,単収束では分解能に限界がある.この色収差に対する,色消しのための速度収束を行う装置を取り付けた質量分析計をいう.図に一例を示す.速度収束のためにイオン源と磁場Mの間に円筒電場E,E′を置く.高い分解能を必要とする同位体比の測定,有機化合物の構造解析,多重線(多重項)の分離原子質量の精密測定,また発生するイオンの速度分布が広い,たとえばグロー放電やスパーク放電などからのイオンの質量分析のために使用される.高分解能を必要とする一例として,12C16O-14N2-13C12CH3-12C2H4の多重線を分離するためには約6000の分解能が必要である.速度収束のために,円筒電場のかわりにウィーンフィルター(Wien filter)やトロイダルコンデンサー(toroidal condenser)も使用されている.また,電場と磁場を同じ場で直交させたトロコイド質量分析計(torochoidal-focusing mass spectrometer,サイクロイド質量分析計(cycloidal-focusing mass spectrometer)ともいう)も二重収束質量分析計の一種である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の二重収束質量分析計の言及

【質量分析法】より

クロマトグラフィー
[質量分析器mass spectrograph]
 質量分析法に使用される装置を総称して質量分析器と呼ぶが,これは偏向型(磁場型)のものと非偏向型のものとに分類できる。前者は一様磁場・電場の内でのイオン偏向軌道の差によって質量分離するもので,単収束質量分析計(図1),二重収束質量分析計等があり,後者には四重極質量分析計(図2),飛行時間差型質量分析計が含まれる。質量分析器の発展を概観すると,1913年J.J.トムソンにより質量分析器と呼ばれうる最初のものが考案された。…

※「二重収束質量分析計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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