イオンを電磁気的に質量分離し,質量別にイオン量を測定する機器の総称.質量分離したイオンを同時に写真乾板上にスペクトルとして記録する機器をとくに質量分析器という.その原理から同位体比の測定には不可欠であるが,種々なイオン化法を利用したイオン源を使用することにより,気,液,固相を問わず広く混合物の定量分析に使用されている.地球の高空圏を含め,宇宙空間のイオンや原子・分子などの測定のため,人工衛星に積み使用している.有機化合物はイオン化によりその構造を反映する一定の種々なイオンを生成するので,これを利用して有機化合物の構造決定に利用され,さらにガスクロマトグラフィーと組み合わせたガスクロマトグラフィー質量分析計により,多成分の混合物の分析が行われている.分析以外にもイオン-分子反応,放電,燃焼などの機構の解明など,その応用範囲は広い.もっとも普及している質量分離法は磁場単収束型であるが,それ以外に簡便な四重極質量分析計,飛行時間型質量分析計,高周波質量分析計,イオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析計などが目的に応じ使用されている.オメガトロンも質量分析計の一種であり,高分解能が必要な場合に二重収束質量分析計も使用されている.磁場単収束型の原理は,均一磁場(強さHガウス)中で一定の速度をもつイオンが,質量に応じた半径(r cm)の円運動をすることを利用したものである.1916年,A. Dempsterが180°扇形磁場のものを製作し,1940年,A.O. Nierが図に示した60°扇形磁場を使用したものが基礎となっている.
図の左方のイオン源で生成されたイオンは,加速電圧V(ボルト)で右のほうへ加速され磁場に入射する.ここで,イオンはフレミングの左手の法則で円軌道にまげられ,磁場を出て直線運動をし,検出器に到達する.イオンの原子質量単位での質量をm,電荷をeとすると次の関係がある.
235 U+イオンを2000 V で加速し,5000ガウスの磁場に入射した場合,rは19.8 cm となる.構造上rは固定するほうが都合がよいので,HまたはVを一定として,それぞれVまたはHを変化させ質量スペクトルを得ている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…また質量測定には限界があり,あまり微量の成分の定量には有効ではない。 質量分析計mass spectrometerは電場,磁場を用い物質のe/m(電荷と質量の比)を利用して定量する方法であるが,イオン電流として信号を取り出すことができるので,最近は微量ないし超微量の成分を測定する絶対分析法として利用されるようになった。【綿抜 邦彦】。…
※「質量分析計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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